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2月5日の第5回会議ではエージェンシー制度を導入している諸国を中心に行政改革の動向が事務局から報告され、2月19日の第6回会議では石弘光一橋大教授の説明をもとにエージェンシー制度について簡単な質疑応答が行われている。一方で、政府・自民党内の行革担当実務者らは12月に行政簡素化に関する試案をまとめ、そこでは事務執行部門のスリム化として民営化、民間委託に並び、外庁化(エージェンシー化)が提示され、外庁化の対象として旅券発行や登記、気象業務などが例示されている21)

3月5日の第7回会議では、事務局から今後の議論のたたき台となる「主要論点項目」が提示される。そのなかでは、「企画、立案、調整機能と実施(執行)機能を分離」するという意見についてどう考えるべきか、という形でエージェンシー問題が提起されている。4月2日の第9回会議では7委員から意見が述べられたが、エージェンシーの導入について、議事概要では「外部に出しても差し支えないものは何かという角度からよりきめ細かく分析する必要がある」となっているが、報道では「一部の業務・組織は省庁から独立した外庁(エージェンシー)としてスリム化を図るべきだとの意見が大勢を占めた」とされている22)。なお、この当時開かれていた通常国会の参院予算委員会において、イギリスのエージェンシー制度をどう評価するかという質問に対して橋本総理は、「我々にとって一つの参考の大きなものになり得る考え方」としながらも、「わが国の制度にこれを移しかえるとした場合、どのような問題点があるかは冷静に判定をしてしかるべきもの」と答え、イギリスのエージェンシー制度の直輸入には慎重な姿勢をみせている23)

 

(2) 制度導入の内定と中間整理

4月16日の第10回会議では、次々回の会議から予定される省庁ヒアリングでの質問項目案が事務局から提示され、了承された。そこでは33の事業を対象に「独立機関化(または民営化、地方移管)」の是非が質問されることになっており、そこには登記・供託、恩給支払、統計、貿易保険、工業標準、防衛庁の調達・募集等、自動車等の登録検査、職業紹介などの業務、および国立学校、博物館、国立病院・療養所、社会保険庁、特許庁、気象庁、食糧庁、国土地理院などの機関が含まれていた。行革会議でエージェンシー化の検討対象となる業務が具体的に例示されたのはこの時が初めてであったといえる24)。なお、郵政三事業や印刷局、造幣局などはズバリ民営化の検討対象となっていた。また、この会議では第9回会議に引き続いて委員の意見陳述が行われたが、労働界代表である芦田委員(連合会長)は、「中央省庁の再編にあたって、企画・立案と執行を分離するべきとの考えがあるが、これは…(中略)…行政の効率化を進めるとは言えない」としたうえで、「拙速に形だけのエイジェンシー制度を取り入れ、中央省庁の縦割り権限を温存することはさけるべきである」と述べた資料を提示している。

 

 

 

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