第六報告書は2000年1月に公表されたが、政府は同年4月、その報告の大部分を受け入れると言明している)27)。
5. 本報告書の構成
以上のようなエージェンシー化の流行ともいうべき状況の中で、国際的な比較の視点から指摘されてきた成功のための仮説や問題点が、直ちに我が国の改革にすべてあてはまるわけではない。我が国ではようやく今年4月から「独立行政法人」が発足するのであり、ポリット達の作成した図2でいえば、未だ「改革パッケージの内容」(content of reform package)の段階であり、それがどのような実施プロセスを経て、実際にどのような改革結果を生み出すかについては今後の推移を注視せねばならないであろう。しかしNPM型改革を推進する圧力は多かれ少なかれ我が国の行政改革に対しても影響を及ぼしてくるであろう。他方NPM改革といっても、すべての国が画一的な方向に進むわけではないことは、すでに最近の研究の成果に基づきながら、繰り返し指摘してきた通りである。
我が国のいわゆる橋本行革のもとで、当初のイギリスのエージェンシーへの関心に基づく改革案は、その後かなりイギリスとは性格の違った「独立行政法人」に変容していったことについては第一部の三つの章で分析されている。また第二部の三つの章では、イギリス、米国、オーストラリアを取り上げ、それぞれの国におけるNPM改革の中でのエージェンシー化の動きについて分析し、その課題を述べている。それぞれの章の詳細については直接各章から汲み取っていただくことを読者に希望しておきたいが、各章についての筆者なりの短い紹介を以下で述べてみたい。
まず、第一部第1章は、官邸および与党内におけるエージェンシーへの着目から行政改革会議における最終報告に至るまでの経過を詳細に追求し、さらにその法制化の動きとその内容について詳しく検討している。独立行政法人の政治・行政過程についての基礎的分析を提供するものといえよう。
第2章は、2001年4月に設立される57の独立行政法人のうち、非公務員型独立行政法人を選択した経済産業省所管の経済産業研究所と、日本貿易保険の2機関を選び、各機関の担当者に対するヒアリング調査に基づいて、非公務員型独立行政法人の今後の課題を提起したものである。