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・エージェンシー化は政治的責任の必要性を取り除くものではないし、したがって政治的統制のメカニズムの必要を取り除くものではない。エージェンシーは依然として公的業務を遂行し、その職員の多くは公務員であり、税金を使う。政治的リーダーとエージェンシーのトップ管理層の間の利害の葛藤は、よく見られることである。しかし両者の葛藤が公になり、繰り返されるならば、相互信頼は崩れる。このような環境において、エージェンシー化の成功の条件は失われる。

・構造上の分解だけでは、組織の生産性の急速な変化を生み出すようには思われない。専門分化プラス自律性だけでは、行動のインセンティヴつまり組織文化を変えることにほとんど役立たないから、業績変革の適切な処方箋とはならない。

 

(2) 業績「契約」上の仮説

・同様に、業績「契約」も構造上の分解が起こらないところでは、うまく働かないように思われる。新しいアウトプット・ターゲットを達成することも、職員が大規模で多目的官僚制の中で仕事をしている状況においては、あまりインパクトを持たないだろう。

・構造上の分解と同様、業績志向に基づく契約は多次元的である。したがって構造上の分解に関してと同様、(IV)ボックスへのエージェンシー化の利点は業績志向が一つまたは二つの孤立化した側面に関してだけではなく、エージェンシーの手続き全体に浸透しているときに最も明白である。アウトプットを明確に規定するが、アウトカムについては沈黙しているという契約は、アウトプットへの執着(output fixation)25)という危険を冒すことになる。

・契約(準契約)の意義は、主務省とエージェンシーの関係における機能的相互依存関係の程度によって変化する。例えば、きわめて専門的サービスを提供するエージェンシーは主務省をほとんど必要としない。両当事者がお互いに他を必要としない場合には、準契約だけでは長期的に両者を統合するのに十分ではない。

・いくつかの機能は、他の機能よりも契約上に明記することが一層難しい。例えば、学校のアウトプットは車両登録エージェンシーのアウトプットに比べて契約に明記することが容易ではない。またエイズ被害者のカウンセリング機関のアウトプットは学校のアウトプットより一層明記することが困難である。要するに、アウトプットの監査がむずかしいところでは、プロセスあるいはインプットさえより厳格に統制する必要があるともいえよう。

 

 

 

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