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第二に、研究者による研究とコメントの主題である。NPMについて解説した最も広く引用される論文のなかで、フッドはNPMの起源、台頭、受容を検討し、その問題点についても指摘しているが、彼はNPMを一つの教義と呼んでおり、一つの体系的な理論でないことを示唆している。しかし、知的アイデアという点でNPMは「公共選択理論などの『新制度派経済学』とビジネスタイプの『新経営管理主義(New Managerialism)』という二つの異なる思想の結婚」14)と解説されている。

改革の根底にある二つの知的アイデアの間の関係については、論者によって見解が異なる。例えば、「公共選択理論」は官僚制の統制問題を中心におき、政治家によるより厳格な統制を可能にする手段を追求する。そのさい市場または「選択の自由」を重視する。他方「新経営管理主義」は、官僚制の行き過ぎた階統制の改革に中心をおき、企業経営をモデルとして権限委譲と「管理の自由」を強調する。このような二つの異なるアイデアに注目し、二つのアイデア間の緊張関係ないし矛盾を指摘する論者もいる。

しかし、筆者は両者の共存関係、むしろ協働関係を指摘する見解に注目したい。例えば、公共選択論者は官僚制の政治統制強化のために経営管理主義的方策を主張するし、他方、経営管理主義論者は、官僚制を民間セクター類似の構造へと再編成する必要を主張するさいに、官僚制は市場の原理に従わないで予算最大化行動をとるという公共選択理論の定理を引用して、その主張を正当化しようとする15)

こうして、改革が進行し、NPMをめぐる議論が展開されるにつれて、統一的改革運動と思われたものは、事実において、国家間やセクター間で非常に異なった現象として現れているということが注目されはじめた16)

例えば、上述のダンレヴィーとフッドは四つのNPMモデルを提示しているし、ファーリー達も四つの公共管理モデルについて論述しているが、ここでは、その内容にまでは立ち入らない17)。また、イギリスの外に目を向けるとNPMという言葉をあまり使っていなかった米国ではクリントン行革のバイブルといわれる書物(注4参照)で、前述のオズボーン達は起業家精神の必要性を強調したが、この本はベストセラーになり、国際的にも大きな影響力をもった(メージャー政権下のイギリスでも大きく取り上げられた)。

第三に、NPMは最近の行政改革の中で観察される一組の実践であった。改革の進行とともに、NPM改革のねらいとその現実との間の乖離を指摘する議論が現れるにつれて、NPMの有効性に関しても今日なお議論は激しく展開されている。従来あまりNPMという言葉を使わなかった米国においても、近年NPMをめぐるシンポジュームが開催され、白熱した論議が展開されていることは注目すべきことである18)

 

 

 

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