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・だが、それだけでも十分でなく、経営管理主義アイデアと政策の受入の各国間の多様性を説明するためにコンサルタントと国家の間の相互作用に注目するアプローチを発展させる過程を通じて、上記三つのモデルのいずれも、経営管理主義の影響を説明する変数としてそれだけでは十分ではない。これらアプローチは、いずれも、非歴史的でありその意味で制度的要因と国家の重要性を無視しているとサン・マルタンは結論づけている10)

この意味で、各国の政治的・行政的なシステムの特質を含む研究が必要であろう。そのような文脈との関連で、注目すべきもう一つの研究成果は、ポリットとブッケールによる『公共管理改革』11)であり、以前の著作の多くと異なり、NPMに傾倒している国々だけではなく、非NPMまたはNPMに抵抗している国々も含んだ10か国にわたる行政管理改革の広汎な比較研究を展開している。この大著をここで十分に紹介することはできないが、本稿との関連で、とくに彼らの次のような指摘に注目したい。

「公共部門における管理の変革については、それがいくつかの自由に浮動する普遍的な現象の集合であると理解することでは十分でない、というピーターズたちの見解に賛成するものである。われわれは、公共管理改革は、政治的問題とそれに対する応答のパターンにおける、より広範囲にわたる転換の一要素として解釈されるべきであると信じる。要するに、公共管理は、つねに公的ガバナンスのより広いアジェンダの一部なのである」12)

このような観点から、彼らは図2のような「行政管理改革のモデル」を提示している。彼らの分析は先進国に限定しても日本を含んでいないし、またヨーロッパでも南欧の国々を含んでいない。したがって、比較研究を拡大して、これらの国を分析するためには、さらに枠組みに多くの肉付けが必要であり、場合によってはモデルの若干の修正をも必要とするであろう。しかし、この図は我が国の行政改革を分析するさいにも手がかりを提供すると考えられるので図示しておきたい。

 

 

 

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