・官僚制文化の起業家的管理文化への転換2)。
このような改革の中で、ニュー・パブリック・マネジメント(New Public Management;以下NPMと略す)モデルがイギリスやニュージーランドなどから始まり、多様な経済、政治システムを横断して広範に採用されてきたことは、それが時代の要求にこたえる面をもっていたとしても、その将来モデルとしての精度(precision)に関しては争われている3)。オズボーンとゲーブラーは行政改革の単一モデルへの「不可避的」で「グローバルな」運動が世界的規模で発生している4)、と主張する。他方、ダンレヴィーとフッドは「この分野での将来起こりそうなことは、多元的であり、単一ではない」5)と主張する。変革への圧力はさまざまなシステムを横断して一貫性と類似性を持つように見えるが、改革の将来モデルについては、大きな論争の対象となっているということができよう。
筆者は『現代の行政改革とエージェンシー』の中で、このような現代行政改革の背景要因として次のような点を指摘した。
「(1)経済不況に伴い、多額の財政赤字をもたらした財政危機の深刻化。
(2)ニュー・ライトのイデオロギーに基づく大きな政府への疑念ないし否認とそれに伴う国家の守備範囲の見直し。
(3)政府の問題解決能力への市民の不信。
(4)国際的な流行となったマネジメント改革への新たな関心の高まり。これはとくに新公共管理(NPM)とも呼ばれている。
(5)NPM導入を一層容易にする情報テクノロジーの発展。
この他、ヨーロッパでのEU統合のインパクトにも見られるような、国際化の進展および経済のグローバリゼーションの進行に伴う国内改革へのインパクトなども重要であろう」6)。
このような観点から、NPMをもたらしたさまざまな背景要因を同書の中で図1のように図示してみた。
今日においても、この指摘は基本的には間違っていないと考えているが、もう少し最近の研究もふまえて補完しておきたい。