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総論 現代行政改革の潮流とエージェンシー化の進展

 

1. 現代行政改革の性格と背景についての最近の研究動向

(1) 現代行政改革の特色と背景要因

過去20年間にわたり、行政改革の前例のないほどの大きなうねりが、世界の多くの国々を席巻した。これらの改革は先進諸国で始まったということができるが、そこでは1970年代の石油ショックを契機とする経済不況と財政危機のもとで、政治的リーダーは増税を安易に行えないような環境の中で、公共支出の削減を強いられた。しかし他方、国民からは、公共サービスへの要求が依然として強く、サービスの質の向上さえも求められていた。このような状況の中で、改革の一つの重要な特徴は、「国家の規模が過大になりすぎ、過重な役割を担いすぎているという信仰であり、市場が財とサービスの能率的供給を達成するための優れたメカニズムであるという信条であった」1)

このような方向でのラディカルな行政改革は、次のような方策によって確立されると考えられた。

・民営化による公共部門の再構築と縮小。

・公務員制の再編成とスリム化。

・内部市場および民間部門との契約による公共サービスへの競争原理の導入。

・能率の増進、とくに業績監査および業績測定による「支出に見合う価値」(Value For Money;以下VFMと略す)の確保。

さらに、これらの相互に関連した改革は、次のような特徴をもつ公共管理のさまざまな種類を生み出すだろうとされていた。

・戦略政策の運営管理からの分離。

・プロセスよりも結果への関心。

・官僚制組織のニーズよりも市民(顧客)のニーズへの志向。

・直接供給から条件整備的(enabling)役割への変化。

 

 

 

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