D. 感度分析(Sensitivity Analysis)
ターミナルの運営成績は多くの要素に強く依存している。その要素には(1)コンテナ取扱量、(2)取扱高収入(コンテナ当たりの単価)、(3)運営経費が含まれる。運営成績はそれらの要素によって変化するが、取扱高はコンテナターミナルにとって財務上の業績を大きく主導するものである。取扱高の変動に対する運営成績の反応を評価するため、感度分析を行った。
オペレータの主な収入源は取扱量であるから、コンテナ取扱量のいかなる変化も収入に直接影響を及ぼす。例示表4に示した想定分析は表12で示した取扱高の基本ケースの場合を反映している。この基本ケースは既存の港湾利用者の予定される成長と、ターミナルプロジェクトの完成に伴い参入するMatsonを考慮しているが、増加する潜在的な利用者については算入していない。
取扱高の変動に対する運営成績の感度を評価するため、第V章D.3節で説明し表12で示した上方予測と下方予測について想定分析を行った。この影響度分析においては他の変数はすべて一定値に据え置いている。
第V章D.3節で議論したように、下方予測では基本ケースに比較して若干低い成長率と市場シェアを設定している。さらにMatsonによる追加量も除いている。というのも借受者がMatsonの貨物を引き続きT25で扱う可能性が残されているからだ。予想できることだが、所得税引き前、オペレータ会社の諸経費分減額前のキャッシュフロー値は、基本ケースに比較して低くなっている。しかも2003年ではキャッシュフローはマイナス値まで下がっている。しかし、次の年からは黒字のキャッシュフローに復帰しているし、この推計期間の全体を通して見れば、累積キャッシュフローは(黒字で)維持されている。
ターミナルオペレータはT18のようなターミナルの価値を、短期的な収益性だけでなく、ターミナルの能力が収益性と成長性の面で長期的な目標を達成する運営にとって申し分ないものかどうかで評価するものである。ある民間企業が短期的な赤字に耐えられるかどうかの指標はターミナル運営の累積総収入をみればよい。例示表5に示したように、所得税引き前、オペレータ会社の諸経費分減額前のキャッシュフロー累積値は全期間を通してすべて黒字となる展開であり、毎年成長するという展開を示している。