8. シンガポールの国情
シンガポールの港湾産業のGDPに占める割合は、5%である。これは、日本のように産業連関での波及的なものは計上していないと考えられる。中国、マレー、インド系と多国人種国家であり、国民は小学校の段階から、母国語と英語をナショナル・ランゲージとして学ぶ。職業による給与差は大きく、大学卒のエンジニアやアーキテクトは、通常の事務職に比較して格差がある。もともと、近隣諸国の中で最も高い国民所得を維持してきているので、政府主導の産業政策や国土開発に対して、異議を唱える国民は少ない。この点、民間側の公共工事のための土地の明け渡しもすんなりいくし、国土も政府のもので、民間の土地利用は政府からの長期の貸付の形をとっている。いわゆるマフィアも存在しないし、政府役人の汚職もほとんどないクリーンな国である。人口は、現在300万人程度であるが、政府は将来的には500万ぐらいまで住める国を考えている。
以下、今回ヒアリングしたシンガポール駐在の人の話の掲載する。
(A氏の話)
日本とシンガポールの大きな違いは、ソフト面である。
まず、
1]国の取り組み姿勢であるし、
2]小さな国ゆえにできることもあるし、
3]国策に反対する人がいない。
また、国民がその教育政策によって、コンピュータに詳しく、また英語がよく話せることは、アジアのハブを形成するにふさわしいことである。また、官僚の汚職がない点もよい(その分、給与も高い)。PSAも組織としての効率性が高く、全員でいかにトランシッブを早くするかを考えて、実行している。フィーダー船が到着して、4時間以内に本船が出航できたりするこの速さはすばらしい。
(B氏の話)
シンガポールは政府主導のリーダーシップがある。日本は既得権益のなかで、非効率性がどうしようもなくなってから、後追いの規制緩和を行っている状態である。PSAの民営化も、
1]官主導で限界があること
2]新規に参入させ、競争させること
があると思う。
シンガポールも昔と違って、今はチャイナタウンとかの古い部分を保存条例で残すようになってきている。つまり、従来の経済一辺倒から各人種の文化を大切にする方向に変わった。海外からオーケストラを呼んだり、美術館をつくるなど変わってきている。
シンガポールは基本的に共働きである。これは、女性が地位ある仕事に付けること。あまさん(家政婦)を周辺諸国から月4万円で雇えること。家族で食事する場所がいたるところにあることで可能となっている。大学卒の40才のエンジニアで夫婦合わせて年収1000万円はいくであろう。マンションの価格は結構高く、HDBの公社供給のものでも、1500万円ぐらいはするようになった。