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昔は、住宅より車の方が高いといわれていたのに(1800ccの大衆車で800万円はする)。その他、酒とたばこには高い関税がかかる。日本の消費税にあたるGSTも3%が一般商品にかかる。これは、日本に1年遅れて実施された。現在も3%のままである。

 

9. 調査員の感想と意見

 

港湾運営の一元的管理の秘訣のようなものを探る調査であったが、見たのは港湾管理者と運営組織が分離してしまった姿である。97年10月のPSAの民営化で、シンガポール港湾の整備運営方式は大陸的になってきた。MPAは、競争原理の導入から、従来PSAの独占であったタグボートサービスを自由化してしまっている。

シンガポールは天然の良港であることに、東西の航路の中継点として、給油作業などに絶好の場所でもある。アジアの経済が発展する中で、シンガポールに持ち込めばすぐに別の本船に積み込んで早く出港できる環境にあれば、自ずと貨物が集まる。マレーシアやインドネシアがマラッカ海峡沿いに港湾整備を進めており、シンガポールの競争相手として出てくるというが、シンガポールはさほど相手にしていないのではないか。それは、貨物の集積で、機械も作業者もすべて効率よく運用でき、コンテナ取扱費用を安くできるからである。MPAもPSAもその営業収入の半分近くが利益として計上できているから、近くに港を作って、シンガポールと競争するのは、相当の覚悟を要するものではなかろうか。

このシンガポール港の使いやすさには、港湾情報システムの充実も列挙されるであろう。ポートネットとトレードネットが連動しており、申請者は同じデータを繰り返し入力する手間がないという。この辺、実際に船社事務所で、その入力状態を確認してみたい。

では、日本の港湾がシンガポール港から学べることは何か。まず、日本と大きく違っているのは、コンテナターミナル全体を一つのターミナルオペレータ(PSAコーポレーション)に営業免許を与えていることある。そのオペレータが主な作業員を直接雇用して、運営している。これが、ハブ港としての立地の有利性に合わせて、自前で様々なサービスを構築し、その使いやすさから、貨物が相乗的に集まってくる。相乗的に集まれば、終日の運営が可能で、人材・資材を効率的に活用できる。

日本のコンテナターミナルは、再度この大きなオペレータの形成を何らかの形で図り、コンテナ貨物が終日集中して扱えるように、戦略的にターミナル配置を行うことで、シンガポール港に近づくことが可能であるが、何せ今までの日本の港湾の歴史と経緯があり、ことはそう簡単でない。港運の規制緩和の答申がこの6月になされるが、コンテナが集約的に扱え、コンテナ取扱作業者の仕事もしっかり確保できる状態になることが、日本の港湾の取るべき姿であろう。これは、地方に拡散したコンテナ貨物の微々たるシェアを主要港に再度戻せといっているのでは全くない。地方は地方で、コンテナ物流があることは非常に大切なことである。要は、主要港は、確保できるコンテナ量の中で、どのような形に変革すれば、それらがより効率的に扱え、1個当たりの取扱単価が安くなるかを競い合えばよいと考える。

 

 

 

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