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イ) 将来にわたって支払うべきコストについては、地価が上昇していく過程では国が所有する方が有利であるが、逆に地価が下落していく過程では賃借が有利である。

ロ) 行政需要の増加や情報化の進展等の社会情勢の変化に対し、賃借の場合は、増床や移転等について柔軟に対応しやすい。他方、財産を耐用年数程度の長期間にわたって使用する場合、国が所有する方が低コストであるケースが多いと考えられる。

 

4]また、行政の用に供する財産の調達を考える際には、あわせて建物の管理について、国が所有・管理する場合と、民間から賃借して民間が管理する場合のコストや管理の内容を比較する必要があるとの指摘があった。これについては、例えば、周辺ビルと一括して管理できるケース等では民間による管理の方が効率的である場合も考えられようが、その場合でも、所有は国で管理は民間に委託という選択肢も考えられるところであり、個別の事案毎に現実的な選択肢の中で総合的に判断していく必要があろう。なお、行政の用に供する財産と民間企業の保有地、施設を、何らかの機関を活用すること等により一体化して開発・処分を行い、21世紀にふさわしい都市づくりを推進すべきではないかとの意見もあった。

 

(2) 行政財産の管理形態についての検討

1]都心部に位置する行政財産の中には、必ずしも土地を効率的に利用していない例が見受けられる場合もある。非効率な利用となっている行政財産については、従来は用途変更や、用途廃止の上普通財産として売却すること等によって効率化を図ってきたところである。

今後は、これに加えて民間との共同利用やPFI方式の活用など民間企業的な柔軟な考え方を導入し、国有地の効率的な利用を図るべきである。

PFI(Private Finance Initiative)方式とは、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るものであり、国有財産の効率的な利用を図る観点からも、同方式を活用することは有益であると考えられる。現在、同方式を導入するため、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案」が議員提案により国会に提出されている。

今後、例えば、各省庁が国有地上に公共施設等を整備するに当たっては、公共施設等の性格、国が自ら公共施設等を整備する場合とPFI方式を活用する場合の財政負担の比較、公共施設等を賃借することによる行政目的への影響などを総合的に勘案し、PFI方式を活用することにつきメリットが多いと認められる場合にはPFI方式による公共施設等の整備を検討すべきである。なお、PFI事業を行う民間事業者の選定に当たっては、公開の競争による等できる限り透明性を確保する仕組みとすべきである。

2]また、例えば、庁舎等の施設において、国の利用部分が長期的に減少していくような場合、その全体を一旦民間に売却し、必要な面積のみ賃借する方が経済的ではないかとの指摘があった。

このような方法については、当該庁舎等の性格、その活用が効率的かどうか、売却収入と将来にわたる賃借料支出との比較、賃借に切り替える場合の行政目的への影響などを総合的に勘案し、行政財産として所有し続けることを上回るメリットがあるかどうか慎重に検討すべきである。

3]行政財産について、資産としてより効率的な活用を図る一つの方法として、国有財産法上の総括権に基づき、当該財産を利用して行われている国の事業自体の民営化や経営権の民間委譲を検討すべきではないかとの指摘がなされた。例えば、国立大学や国立病院等国有財産である土地、施設等を用いる国の事業について、非効率な使用が認められる場合には、当該財産のより有効な活用方法として民営化が選択肢として考えられるといった提言を国有財産行政の観点から行うことも検討してみてはどうかとの意見があった。

さらに、これに関連して、国の事業の民営化の課題は、我が国の構造改革全体を推進し、小さな政府を実現する契機として考えていくべき問題であるとの意見もあった。

しかし、この意見に対しては、民営化の是非については事業のあり方自体の検討が不可欠であり、国有財産の管理の立場のみでは論じられないとの指摘が出された。

また、行政財産ではないが、国有財産の中には国の特殊法人等に対する「出資による権利」がある。「出資による権利」の国有財産台帳価格は、現行制度上、当該法人に対する出資金の累計額となっているが、この台帳価格が必ずしも実情を反映した価格となっているとは言い難い面があり、今後、「出資による権利」の現在額及び現状を実情に即したものに近づける作業を行うことを検討する必要がある。

 

 

 

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