日本財団 図書館


また、行政財産については、原則として各省庁別に縦割りに管理する仕組みとされている。これは、口座数(土地・建物)が全国で約4万件という膨大な数に上り、用途も様々であること等によるものであるが、他方で行政財産の効率化を図るに当たって、管理主体毎の個別的な対応にとどまり、行政全体としての効率化が十分には進まなかったケースもあったのではないかとの指摘もある。

 

行政財産の効率性の判断に関する基本的考え方

(1) 従来より国有財産中央審議会の答申において、行政財産の効率化について言及がなされているところであるが、行政財産の効率的管理の方策を検討するに当たっては、その前提として、行政財産の効率性を判断する上での基本的な考え方を整理する必要がある。

(2) 行政財産の効率性の判断については、従来から、土地の有効利用の観点に着目し、所定の容積率に照らして有効に使われているか、施設規模等が適正かどうか等の点について、主として数量的な面から判断が行われてきた。今後は、これに加え、当該行政財産の機能・立地等の個別具体の諸事情を勘案するとともに、事後的な判断に当たっては利用の実態も考慮していくことが重要である。

(3) また、効率性の判断基準として、コスト・ベネフィット分析の手法を適用してはどうかとの意見があった。一般的には、ある財産について、将来にわたって得られる利益が、当該財産を他の用途に用いたときに得られる利益を上回る場合、効率的な利用がなされていると言うことができよう。しかしながら、行政財産については、一般に行政サービスによる収入は考えにくい一方、公共的利益が大きいという事情があり、期待される収益の算定が困難であると考えられる。また、公平性その他の政策的必要性など効率性以外の要素が重視されるケースも多く、行政財産について、コスト・ベネフィット分析の手法をそのまま適用することは困難である。しかし、行政財産の立地の適否等を判断する場合などでは、数量化は困難としても、コスト・ベネフィット分析の考え方で考察することが有益であるケースもあるので、このような考え方を極力取り入れていくことも必要ではないかと考えられる。

(4) さらに、行政財産の調達・管理の多様化の検討とあわせて、調達・管理の各種方法の効率性を判断する基本的な考え方を整理していく必要があり、例えば、財産を所有する場合と賃借する場合の比較に当たって、どのような観点から効率性を判断するのか等を検討していく必要があるとの意見があった。この点については、今後、調達・管理手法を巡る検討を具体化していく中で、効率性を判断するに当たって考慮すべき要素を分析、整理していくことが重要であると考えられる。

 

行政財産の調達・管理のあり方の多様化

(1) 行政財産の調達方法についての検討

1]国が事務・事業を行う庁舎や職員の居住の用に供する宿舎等の財産をどのような形で調達すべきかについては、前述のように法令上特段の規定はない。防衛施設等その所在・構造が機密に属するものなどは、財産の性質上、当然に国が自ら所有すべきであると考えられるが、従来、こうした財産以外のものについても、業務の安定的遂行を重視する観点から、国が所有することが基本とされ、国有財産として手当てできない場合に例外的に民間等から賃借することとされてきた。こうした国所有を原則とする慣例は、地価の上昇が長期的に見込まれた時期においては、経済的にも合理的な選択であったと言うことができる。しかし、他方で、賃借による庁舎等の機動的な調達が行われにくかったため、各省庁は、自ら所有する庁舎等の業務上の必要性が希薄になった場合であっても、将来の行政需要に備えて用途廃止せずに保有を続ける傾向があったのではないかとの指摘もある。

2]地価の下落、民間のオフィスビル等の質・量の充実、また、新たな行政需要の増加や情報化の進展に対する柔軟な対応への要請など、最近の行政財産を取り巻く情勢は大きく変化してきている。今後の行政の用に供する財産の調達については、国所有を原則としてきた従来の慣例にとらわれることなく、当該財産を用いる業務の性質、業務の安定的な遂行、経済的効率性等を総合勘案の上、所有するか、賃借するかを判断していくべきものと考えられる。

3]その際、所有と賃借の経済的効率性の面からの比較としては、例えば以下のような得失が考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION