緊急監査制度は以下の手続きに従い行うものとする。
(イ)ダンピング調査
ダンピング申告や当該港の荷役量の減少などを契機として、当該港においてダンピングが広く行われているおそれがないか調査を行う。
(ロ)緊急監査
ダンピング調査の結果、当該港において、ダンピングが広く行われているおそれがある場合に、事案に応じ必要な範囲の事業者に対し、緊急監査を実施する。緊急監査の結果、港湾運送事業者が過度のダンピングを行っていた場合には、文書警告、改善実施計画の提出要求等を行う。
(ハ)改善状況報告
文書警告後、3ヶ月後ないし1年後に改善状況報告を求める。
(ニ)再度の監査
改善状況報告に問題等があり、再度の監査を行った結果、事態が改善されていないような場合には、直ちに事業停止処分等の行政処分を行う。
ダンピング調査や文書警告、行政処分などを行う場合には、必要に応じ、船社、荷主への、ヒアリング、文書警告等を行った旨の通知、ダンピング再発防止の協力要請のほか、同一の船社、荷主の要請により過度のダンピングが繰り返されていたことが明白なような場合にはその旨の公表などを行う。
なお、料金変更命令制度及び緊急監査制度の運用に当たっては、あらかじめ、運用基準を明らかにするなど透明性や公平性の確保に努めるべきである。
4. 拠出金の確保
1]拠出金は港湾労働年金や港湾労働者の現場施設、宿舎等の維持、整備など港湾労働者の福利厚生の充実のため使われており、労働関係の安定化に重要な役割を果たしている。
2]拠出金制度の導入は、戦後の港湾運送の混乱を解決するため、日雇労働者から常傭労働者への切り替えが急務とされるなか、日雇労働者中心の時代には重要視されなかった福利厚生の充実が強く求められたことによるものである。
しかし、港湾運送事業者は中小零細事業者が多く、これらの福利厚生事業について個々の事業者に任せていては、その整備、充実が進まないとともに、港湾という限られた空間の中で、個々の事業者が個別に福利厚生施設などを整備することは、非効率であるため、港湾運送事業者がそれぞれ拠出金を拠出し、共同して福利厚生事業を行うという現行制度ができたわけである。
3]このような拠出金制度の重要性に鑑み、運輸省は、認可料金制度のもと、拠出金を適正なコストとして認めるとともに認可料金の内訳として拠出金部分を明示(透明化)することにより、船社、荷主の理解と協力を得やすくしていたところである。
また、これに応じ、船社、荷主も、全体として、その内訳として拠出金部分を含むことを明示した荷役料金(認可料金)を支払うという形で拠出金の制度に理解と協力を行ってきたところである。
4]ただ、拠出金の使途である港湾労働者の福利厚生施設の整備運営等に要する資金は、一般には労働者を雇用する事業者が自己の責任と判断の下、自己の収益のうちから支出する性格のものであり、港湾労働者と直接の雇用関係にない船社、荷主がこれを負担するということには必ずしもなじまないと考えられる。
5]しかし、認可料金制度が届出料金制度に変更になるに伴い、以下のような状況が生じることが懸念される。
(イ)認可料金で事実上裏打ちしている拠出金が根拠を失うことにより、現在の各拠出金の額が、船社、荷主(当該船社、荷主の顧客企業も含む。)から荷役料金の中の費用の一部として認められなくなるおそれがある。
(ロ)港湾運送事業者は、中小事業者が多く、規制緩和による競争の激化により経営が悪化し、従来どおりの拠出金の額を負担できなくなるおそれがある。
このような状況となると、従来どおりの拠出金額が確保されなくなるおそれが生じる結果、労働関係が不安定化し、行政改革委員会最終意見や船社、荷主が要望している「港湾運送の安定化を害することなく規制緩和を進める」という命題が達成されなくなるおそれがある。
6]行政改革委員会最終意見においても「現在、関係当事者間の拠出により、労働者の福利厚生が図られているが、規制緩和後も、関係者間で継続した取組みがなされることが重要である」旨の指摘がなされているところであるが、港湾運送事業のコストの一部としての拠出金は常傭労働者による労働関係の安定化に大きな役割を果たしていることに鑑み、5]に指摘するような事態を避けるため、従来どおり、船社、荷主全体としての拠出金制度に対する理解と協力が望まれるところである。