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また、港湾運送事業法に違反した際の罰則についても強化する方向で見直しを行うべきである。

 

2]労働者保有基準の引き上げ

専ら下請事業者との間に介在して手数料を収受すること(いわゆるピンハネ)を業としたり、専ら日雇労働者を使用して港湾運送事業を営むような悪質な事業者の参入を防止するとともに、事業者の経営基盤強化にも資することから、各港湾運送事業者が一定の人数以上の労働者を常傭することを確保するため、規制緩和を行う9港における労働者保有基準(注)を既存事業者の労働者の保有状況やそれぞれの事業の内容も勘案して、1.5倍程度に引き上げるべきである。

(注)労働者保有基準:港湾運送事業者が常傭しておかなければならない労働者の最低保有基準(人数)

 

また、この労働者保有基準の引き上げについては、これを円滑に実施できるよう、港湾運送事業者が、作業の共同化等の斡旋などを行う事業協同組合に加盟している場合には、当該事業協同組合の他の組合員(港湾運送事業者)の常傭労働者を自己の労働者とみなしたうえ、労働者保有基準に係る基準の適否の確認を行うことができるようにすべきである。

 

なお、既存の事業者については、激変緩和措置として、新基準を適用しない猶予期間(答申後3年間程度)を設けるべきである。

 

3]一貫責任制度(法第16条)の維持

一般港湾運送事業者(元請事業者)が引き受けた港湾運送につき、実作業も含め、責任を持って遂行する体制を確保し、専ら下請事業者との間に介在して手数料を収受すること(いわゆるピンハネ)を業とするような悪質な事業者の参入を防止するため、一貫責任制度(法第16条)を維持すべきである。

(注)一貫責任制度:一般港湾運送事業者(元請事業者)は、請け負った貨物量の70%以上を、自ら行うか、又は、当該荷役の実施に自らが責任を持つようにするため、当該元請事業者と一定の資本関係や契約関係にある港湾荷役事業者等(関連下請事業者)に行わせるかしなければならない(法第16条)。

 

3. 過度のダンピングによる港湾運送の混乱の防止策

 

規制緩和の実施により、参入が容易となり、価格規制も緩和される結果、事業者間の競争、特に価格競争が激化する。この結果、事業の効率化が図られ荷役料金が弾力化され、船社、荷主等の港湾ユーザーにとってはメリットが生じるが、一方、価格競争が行き過ぎると労務供給的色彩が強い港湾運送事業の場合、全体のコストに占める労働コストの割合が非常に高いため、労働コストが切り下げられたり、日雇労働者の雇用が増えるなど労働関係が不安定化し、雇用不安、労働争議が生じる可能性が出てくる。また、小規模事業者の多い港湾運送事業者と船社、荷主との間の力関係の差が行き過ぎた料金引き下げを引き起こす可能性もある。

従って、規制緩和による港湾運送事業者間の競争激化や中小企業が多い港湾運送事業者と大企業が多い船社、荷主との力関係の差を原因とする過度のダンピングが広く行われることにより、港湾運送の安定が害されるおそれがあるところから、料金変更命令制度及び緊急監査制度を導入すべきである。

 

1]料金変更命令制度

港湾運送事業者から届出を受けた料金が著しく原価割れ(過度のダンピング)をしている場合等において、運輸大臣が、料金の変更を命ずることができる制度。

 

2]緊急監査制度

個々の港において過度のダンピングが広く行われているおそれがある場合において、当該港の港湾運送事業者に対して緊急に監査を行う制度。

 

 

 

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