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ただし、その実施に当たっては、行政改革委員会最終意見においても指摘されているように、港湾運送事業がその特性から過去混乱の歴史を経験したという事実に鑑み、混乱が生じることのないよう、段階的に規制緩和を進める必要があると考える。具体的には、コンテナ輸送などを中心に内外の物流において大きな役割、機能を担っている(注)京浜港(東京港、川崎港、横浜港)、千葉港、清水港、名古屋港、四日市港、大阪港、神戸港、関門港及び博多港の9港について規制緩和を先行して実施すべきである。

(注)これらの港で日本の外貿コンテナ取扱量の約95%(TEUベース)、輸出入貨物の約80%(金額ベース)を占めている。

 

なお、具体的には、これらの港における一般港湾運送事業、港湾荷役事業、はしけ運送事業、いかだ運送事業の事業免許制を許可制(需給調整規制の廃止)に、料金認可制を届出制にすべきである。

 

V 港湾運送の安定化策

 

1. 基本的考え方

行政改革委員会最終意見においては、「港湾運送事業においては、港湾運送の効率化(コスト削減、サービス向上)を求めれば、港湾運送の安定化(労働関係の安定化等)が損なわれるという懸念がある」旨指摘されているが、規制緩和が行われ、事業免許制が許可制になり、料金認可制が届出制になると、港湾運送事業者間の競争が促進される結果、事業の効率化が図られ、サービスも向上し、船社、荷主等の港湾ユーザーにとって大きなメリットが生じる。

一方、後述のように港湾運送事業者間の競争が激化する等の結果、労働関係が不安定化し、雇用不安、労働争議が生じる可能性や、再び悪質事業者が参入してくる懸念が生じてくる。

仮に、そのような事態に立ち至れば、効率化を求めた結果、かえって全体としての効率化が達成されなくなることとなってしまう。

従って、行政改革委員会最終意見にも指摘されているとおり、効率化のみを求めるのではなく、労働関係等港湾運送の安定化に一定の配慮を払いながら、規制緩和を進めていくことが重要であると考える。具体的には、次のような方策(港湾運送の安定化策)を講じていくべきである。

 

2. 悪質な事業者の参入の防止策

我が国の港湾運送事業は、過去、専ら下請事業者との間に介在して手数料等を収受することを業としたり、専ら日雇労働者を使用して港湾運送事業を営むような悪質な事業者の存在を許した時代があった。

このため、港湾運送事業法の改正を通じ、需給調整規制(免許制法第4条、第6条)、欠格事由(法第6条)、労働者保有義務(法第6条)及び一貫責任制度(法第16条)の各制度により、これら悪質な事業者を排除してきたという歴史を持っている。

今般の規制緩和の結果、港湾運送事業者間の競争が激化すると、全体のコストに占める労働コストの割合が非常に高いため、価格競争の結果が労働コストにしわ寄せされやすく、港湾運送事業者は常傭労働者に代えて日雇労働者への依存を強める可能性が高まる。この結果、労働関係が不安定化するとともに、再び日雇労働者の労務供給を業とする悪質事業者の参入を招くおそれが生じてくる。

こうした悪質な事業者の参入等を防止するため、新たに、欠格事由の拡充、罰則の強化や労働者保有基準の引き上げを行うべきであるとともに、一貫責任制度を従来どおり維持すべきである。

 

1]欠格事由の拡充、罰則の強化

建設業法等の例にならい、欠格事由に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(暴対法)、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(労働者派遣法)等の違反者を新たに含めるとともに、これら違反者が刑の執行等が終わってから港湾運送事業の免許(許可)が受けられない期間の延長も行うべきである。

 

 

 

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