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また、港湾運送事業は、戦後、零細事業者が乱立し、その後免許を得たこれらの事業者間の競争が免許制によって制限された結果、現在に至っても多数の中小事業者がそのまま存在する状況となっている。

そのため、波動性や日曜荷役、夜間荷役などについてこれらの事業者が柔軟に対応できないというような問題も生じてきている。

現在、シンガポール、香港をはじめとするアジアの港湾と比較した場合、コンテナの取扱量などにおいて我が国港湾のアジアにおける相対的地位は大きく低下しつつある。その主な要因としては、日本の貨物の発生量、消費量の相対的な伸び率の低さがあげられるが、このような理由のほか、我が国港湾が香港を除く他のアジアの諸港と比較して港湾諸料金が高く(香港及び欧米の各港とは同程度)、日曜荷役など使い勝手に問題があることも指摘されているところである。

日本を巡る海上貨物量が大きく伸びていた時代には、港湾運送の安定化が強く要請され、免許制等がその役割を大きく発揮したわけであるが、日本経済が成熟し、海上貨物量も伸び悩むとともに、アジア諸港の港勢の伸長により従来日本の主要港が扱っていた日本、アジアの貨物の一部がこれらのアジア諸港を経由するようになるなど港湾運送を巡る情勢が大きく変化するなか、免許制等は、その効果よりもその欠点の方がむしろ大きな問題となってきており、それがもはや見過ごすことができないような状況に立ち至っていると考えられる。

従って、免許制等を廃止して、競争原理を導入することにより、効率的でユーザーのニーズに十分応じうる港湾運送事業に脱皮すべきである。

また、先に述べたように日本の港湾運送事業者は中小事業者が多いところからくる構造的な問題も有していることから、規制緩和を行うと同時に、併せて集約・協業化等により事業規模拡大、企業体力の強化を図っていくべきである。

その結果として、今後次のような事業像を目指していくべきであると考える。

 

2. 港湾運送事業の将来像

港湾運送事業には、その特性や歴史的経緯、中小事業者が多くを占めている状況等から、以下のような問題が生じている。

・波動性の影響が大きく、労働力が遊休化し、非効率が生じやすい。

・特定の船社や荷主に依存した体質になりやすい。

・細分化され、固定化した商権に固執する体制となりやすい。

・商権の変更が、経営に大きな影響を与え、労働問題につながりやすい。

 

このような状況にあることに鑑み、これからの港湾運送事業者は、事業規模を拡大し、企業体力をつけるとともに、必要に応じ、自らターミナルを借り受け、ターミナルオペレーターとして事業展開を図っていくことが必要である。

そうすることによって、船社、荷主からの求めに応じて単に労務を供給するということではなく、競争原理の下、自らの責任において、リスクを負担しながら、ビジネス(ターミナルオペレーター業等)を行っていくという体質に転換していくことが期待される。

また、規模拡大、企業体力強化の結果、

・波動性を企業内に吸収することができ、効率性を高めることができる。

・船社、荷主とバランスのとれた関係を構築していくことができる。

・商権への固執も弱まり、商権の変更に伴う労働問題も発生しにくくなるとともに自社内での吸収が容易となる。

 

このような規模の大きいターミナルオペレーター業が育つことにより、こういった業態の事業者が中心となっている欧米やアジアの主要港にコストやサービスの面で比肩しうる港湾運送の体制をとることができると考える。

もちろん一挙に規模拡大や体力強化を実現することは困難であるが、後述のように、事業協同組合から取りかかるなど集約・協業化を一歩、一歩着実に進めていき、上記のような事業像に早期に近づける努力を行っていくことが重要と考える。

 

IV 規制緩和の実施

 

III.1で指摘したように、現在の港湾運送事業が抱える問題を解決し、日本の港を効率よく、使いやすいものにしていくためには、事業免許制を許可制に(需給調整規制の廃止)、料金認可制を届出制にすることを内容とする規制緩和を実施すべきである。

 

 

 

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