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しかし、その後の経済の再建の過程での荷役量の増大への対応と好不況への対応に関し、港湾運送事業者の経営基盤の安定を図るため、昭和34年、事業免許制及び料金認可制(以下「免許制等」という。)を内容とする港湾運送事業法の改正が行われた。その後数次の改正を経て現在に至るが、同法は、安定的な港湾運送業務の提供を確保し、日本経済の発展に寄与してきた。

 

2. 港湾運送事業の特性

1]重要性

我が国貿易量(トンベース)の99.8%、国内輸送(トンキロベース)の41.7%が港を経由するなど、我が国を巡る物流の世界で、港湾運送事業は、海陸の結節点である港湾において日本経済の生命線を担う重要な役割を果たしている。

また、同事業は、港湾という特定の限られた場所で、トラック等と比較して一度に非常に大量の貨物を取り扱うとともに、荷役革新が進んでいるとはいえ要所要所で人手を要する事業である。

このため、労働関係も含め港湾運送の安定的運営が阻害された場合、海運事業者は直ちに他の港を利用するということも困難な場合が多く、また、利用することが可能な場合であっても本来の寄港地との間の陸送に相当な費用を要することとなる。

したがって、港湾運送の健全かつ安定的な運営を図ることが強く要請され、港湾運送が不安定化した場合には、直ちに貿易及び経済活動に悪影響を及ぼすことから、諸外国においても、港湾運送の安定化に一定の配慮が払われてきており、日本においても、免許制等によってその健全化と安定的運営の確保が図られてきた。

 

2]波動性

港湾運送事業は、景気などに左右される基本的な荷動きの動向による影響に加え、船舶の運航スケジュールも気象、海象に影響され必ずしも安定的でなく、また、荷役の実施自体も天候に左右される部分がある。

したがって、日ごとにその業務量の格差(波動性)が生じるとともに、特に在来荷役においては、当日の具体的な作業量が前日まで確定されないという状況にある。

一方、港湾荷役はチーム(荷役内容により異なるが、1ギャング(10名〜20名程度)〜3ギャング程度必要)を組んで行うものであり、ニーズに柔軟に対応するためには常時一定規模の労働者を確保しておく必要があり、その結果、業務が少ない日に労働力が遊休化してしまうという非効率が生じやすい。また、このことから事業者にとっては、波動性に対応するため、企業外の労働力(日雇労働者)に対する潜在的需要が存在しており、悪質な暴力労務手配師が参入してくる余地が残っている。

 

3]労務供給的事業(労働集約型産業)

港湾運送事業は、基本的に、船社、荷主からの求めに応じ港湾荷役の労務を提供するという受注型の労務供給的事業である。

また、大規模な設備投資等を必ずしも要しないことから、全コストに占める労働コストの割合が非常に高い労働集約型産業となっている。

その結果、日雇労働者の労務供給を業とする悪質事業者が参入しやすい面や仕事の発注者である船社、荷主の影響を大きく受けるという面を持っている。

また、これらに加え、労働環境が厳しいことや中小事業者が多いということもあって、労働問題が発生しやすいという面を持っている。

 

III 港湾運送事業の現状と将来像

 

1. 現状の問題点と解決策

II.1の沿革で述べたごとく、免許制等は、安定的な港湾運送業務の提供を確保し、日本経済の発展に大きく寄与してきたところであるが、一方で、免許制等の下では、新規参入が自由でなく、料金も硬直的であるため、事業者間の競争が生まれにくく、船社、荷主のニーズにあったサービスが提供されにくいという問題が生じている。

 

 

 

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