(技術のグローバル化・多様化への対応)
技術のグローバル化も進みつつあり、例えば「貿易の技術的障害に関する協定」によりISO(国際標準化機構)等の国際標準の尊重及び性能規定化が国際的に取り決められ、また、技術者の国内資格と国際資格との整合を図ることも必要となっている。
また、技術行政に求められる要請は多様化しつつあり、とりわけ、ライフサイクルマネジメントは、施設の構造安全性かつ良質な機能の保持・確保という意味から、その重要性が更に増すものと考えられる。
これら必要な諸基準の整備や我が国の基準の考え方の国際標準への反映等、技術の多様化や国際化に対応するための組織的かつ積極的な対応が重要である。
(技術的な支援の強化)
社会資本整備においては、品質の確保及びコスト縮減に対する事業主体の技術的責任が今後更に増すものと考えられ、事業の適正な実施のために事業主体としての技術の保有が重要である。
また、技術の集積等が十分でない場合にも対応できるよう、研修等を通じた技術の普及や移転、国等の経験豊かな技術者の活用による支援が可能となるような仕組みの整備を図ることが必要である。
第4章 港湾行政のさらなる展開に向けて
21世紀に向けて時代が転換していく中、我が国の持続的発展のためには、経済・社会の変化に港湾が的確に対応していくことが求められる。
本答申においては、現時点で想定される経済・社会の変化を見通し、第2章で「21世紀の港湾のあり方と課題」を、第3章でこれらに対応するための「港湾行政の進むべき方向」を示した。港湾がその役割を果たし、活力のある我が国の形成に貢献するよう、本答申に沿って施策が具体化され着実に実施されることを期待する。
本章では、今後の港湾施策の推進にあたり常に念頭に置いておくべき点を以下強調しておきたい。
(美しく活力ある国土の次世代への継承)
我々が暮らす国土は、ひとり我々の世代だけのものではなく、後世に末永く引き継いでいくものである。
千年紀の節目にあたり、後世に思いを馳せ、国民に交通サービスの行き届いた国土構造、個性を活かした活力のある地域、人の諸活動と調和した良好な環境など後世に引き継ぐべき美しく活力ある国土を形成し、次世代に継承していくことが我々に課せられた重要な課題である。
港湾は、グローバル化が進展する中での海外への交流の窓口としてはもちろん、我が国の将来にとって貴重な資産である海洋・沿岸域の諸活動の拠点として、また、海に開かれたまとまった利用が可能な空間として、さらには、良好な環境の創造の拠点として上記のような国土の形成に果たすべき役割は極めて大きく多岐にわたる。
とりわけ、海外との相互依存関係が確実に強まり、また、環境に負荷の少ない交通体系の構築が望まれる中で、国民生活の安定・安心を確保するためには、海陸の輸送拠点としての港湾の責任は重く、ハード・ソフト両面にわたり、海運の動向に対応した質の高い港湾サービスを常に実現し、継承していくことが極めて重要である。
これまでに蓄積された既存ストックの活用や革新的な港湾技術の開発を図りつつ、時代の変化に対応した次世代の港湾像を構築し、幅広い関係者の取り組みにより、その実現に向けた施策の展開を図ることが重要である。
(従来の枠組みにとらわれない総合的な施策の展開)
これからの時代は、既存の社会の枠組みを前提とした発想が変化していく時代でもある。
我が国のかけがえのない資産である海洋・沿岸域について、その適切で多目的な利用の実現や良好な環境の形成に対する要請が高まるとともに、個性ある地域づくりへの貢献など、港湾施策の推進にあたり他分野と緊密に連携して取り組むべき課題が増加していくことが考えられる。
総合的な海洋・沿岸域の利用、他の輸送モードとの連携による物流システムの効率化、まちづくりや地域住民と連携し親水性が高く、港湾の風景や歴史を活かした魅力ある地域づくりなど、港湾分野がこれまで蓄積してきた技術や経験を活かしつつ、これまでの枠組みに捕らわれない総合的な取り組みが他行政分野や関係機関と連携して積極的に講じられることが重要である。