日本財団 図書館


また、施設の使用料金についても、施設使用ルールの多様化に対応して、利用頻度に応じた弾力的な料金設定等を行うことが必要である。

なお、いわゆる「新方式」により整備・運営されるコンテナターミナルについても、港湾管理者は、上記の考え方を踏まえ、長期的な事前包括承認等の予約制度の導入等を図ることが必要である。

 

3. 更新需要への適切かつ計画的な対応

港湾施設には、その設計時の耐用年数を50年としているものが多く、1960年代から急速に整備された施設の多くが、約10年後には設計上の耐用年数を迎え通常の維持、管理の範囲を超える更新需要が急増することが懸念される。

厳しい財政制約の中で、既存施設の延命化を図る一方、機能的な陳腐化による耐用年数以下での更新需要への適切な対応も考慮し、更新投資の過度の集中を防ぐためにも計画的な更新工事を進めていくことが必要である。そのため施設の老朽度合の確認、更新の必要性の有無の検討、復旧工法等の調査・設計を計画的に進めておくことが必要である。

また、更新にあたっては、施設新設時と同様に多額の整備費が必要となる場合も想定される。このため、施設の建設当初の効用を維持・復旧する目的の改良工事により、施設の劣化回復や延命化を図るための財政的措置を充実させるとともに、効率的・効果的に改良工事を行っていくことが必要である。

その際、港湾管理者に管理委託されている国有港湾施設については、費用負担や実施主体等に関して、直轄事業の具体的範囲の考え方等を踏まえ、国と港湾管理者の役割を明確にしておく必要がある。

 

4. 緊急時を始め迅速な施設の状況の把握と情報提供を可能とするシステムの構築

阪神・淡路大震災等の大規模・広域的な災害の経験を踏まえ、災害を未然に防止することのみならず、発生した災害に対して、状況判断や被害拡大防止の措置、災害復旧に迅速かつ機動的に対応できる危機管理が求められている。

また、国の定める基本方針等に対する各港湾ごとの施設整備の進捗等の確認や、各港におけるサービスの状況の把握、港湾利用者等への迅速な情報提供のためにも港湾施設の管理状況を一元的に把握出来る情報のデータベースは有効である。

このため、災害発生時等の諸々の状況下において、港湾の現状を把握するとともに、港湾利用者等にも情報提供していくための情報管理システムを構築するべきである。この際、公平かつ迅速な利用が可能となる運用体制を確立する必要がある。

 

5. 技術開発の推進とその成果の活用

港湾分野においては、港湾技術研究所が計画、調査、設計、施工にわたる広範な基礎的研究を、また港湾建設局等においては港湾事業の実施を通じ技術の蓄積を図ってきた。こうして得られた港湾の技術は、海外の技術基準においても採用されるなど、国際的にも高い評価を得てきている。

港湾を取り巻く環境が大きく変化する中で、21世紀の港湾のあり方の実現に向けた様々な取り組みを支援し、新たな要請に的確に対応した港湾行政を推進するためには、これまでの蓄積された技術を基礎として、技術に係る人、組織、施設という技術

資源を有効活用するとともに、新たな技術開発に取り組むなど港湾の技術の向上・普及を図る必要がある。

 

(技術の目指す目標の設定)

国は独自の技術開発以外にも、大学や民間との共同研究・共同技術開発等、他機関と連携した技術開発の推進及び技術開発成果の活用を促進する施策についても積極的に展開してきたところであるが、他分野への展開も含めこの重要性は益々高まるものと考えられる。

技術研究開発の効率化、その開発成果活用の透明性、技術の国際化といった技術研究開発に求められる諸要件を踏まえると、効率的な研究開発体制の確立、通信・情報技術等の次の時代をリードする技術シーズの発掘、技術研究開発成果の評価、国際的な貢献等が重要となる。

そのために国としては、例えば、海上交通の安全性や高速化・効率性を向上させる輸送システムの構築に関する分野、環境創造の分野、自然エネルギーの活用分野、大規模な震災や油流出事故の際の危機管理の充実を図る分野等、港湾技術として目指す目標を明示しておくことが必要である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION