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さらに、循環型経済・社会の構築の観点から、廃棄物の減量・減容化やリサイクル、海運を活用した静脈物流網の構築に向けて、関係機関と連携した幅広い取り組みも必要である。

 

3. 港湾区域の適正な利用の確保

港湾区域は、経済的に一体の港湾として管理運営される水域として設定されており、船舶の安全な航行のためにも重要な水域である。

しかし、港湾区域には、水域占用許可を得ていない構築物の設置や、所有者不明のプレジャーボートが放置される等、港湾の適正な管理運営、安全な船舶航行、港湾や周辺環境の保全等に支障を来している例も少なくない。

港湾区域の適正な利用を図るためには、水域管理上の支障を及ぼしている構築物や船舶の処分等について、港湾管理者が適正な行政措置を講じることができるようにすべきである。

特に、プレジャーボートについては、届出等の制度の導入による所有者の体系的把握と併せ、所有者の自己責任による係留・保管場所の確保のルール徹底や義務化についての検討を行うとともに、簡易な係留・保管施設の整備、暫定的に係留を認める水域の設定等を進めていくことも必要である。

 

第4節 港湾行政の透明性、効率性等の向上

 

1. 事業評価の実施

財政制約の中で、より使いやすい港湾づくりを進めていくためにも、公共事業のより効率的な実施が求められている。このため、港湾の建設及び改良においては、事業の実施の前あるいは途中において、事業に要する費用とその効果を比較する等の手法による評価を行い、その結果を公表することにより、公共事業の決定過程の透明化及び評価の適正化を図ることとしている。

今後は、事業実施前及び実施中の費用対効果分析に加えて、時間管理概念の導入や事後の評価方法についても検討すべきである。なお、分析方法については、より適切な分析方法となるよう、実施を通じて得られた課題等に対する改良を加えていくことが必要である。

 

2. 施設の使用ルール等、港湾サービスの多様性の確保

港湾施設の使用形態には、現在、不特定の船会社がその都度利用する「公共方式」と特定の船会社等に貸し付けられる「公社方式」がある。

「公社(公団)方式」は、1960年代半ば、海上運送のコンテナ化が加速度的に進展することが見込まれたことから、船会社等の要望を踏まえた「コンテナ埠頭の緊急整備」と「専用使用によるコンテナ船の効率的利用」を可能とするため、従来の「公共方式」を補完することを目的として創設された。その後、内航中長距離フェリー航路においても導入された。

しかしながら、「公共方式」と異なり、国と地方の無利子貸付金や財投資金等の借入金による施設整備のため、原価回収を基本とする固定的な貸付料金となっている。

このため、公社バースの取扱貨物量が当初借り主の想定した量と異なってくる場合には、借主である船会社にとっての当該貸付料の負担感も大きく違うものとなってくる。

さらに、就航船舶の大型化に伴う施設の高規格化・大規模化等から施設整備費が高額となっていることや「公共方式」によるコンテナ船やフェリー航路用の同等機能の施設整備が進んできていることもあいまって、「公社方式」のメリットが相対的に低下してきている。

他方、「公共方式」についても、現行では、原則として船会社はその都度利用するごとに、施設の使用許可の申請を行い港湾管理者が係留場所を指定することとなっており、施設利用における不安定要因となっている。

港湾における輸送コストが最も低減される使用形態は、その貨物取扱量によって異なり、船会社等のニーズに適宜対応していくための使用形態の多様化や効果的な財政支援等を講じていくことが必要となる。

このため、各港において各港湾管理者が港湾を元的に管理運営していく観点から、港湾の実状に応じて「公共方式」と「公社方式」の適正な役割分担について見直すとともに、「公共方式」については、公共性を阻害しない一定の条件下で定期航路等の効率的運用を図ることが可能となるよう各港湾の実情に応じた使用ルールの確立、「公社方式」については、船会社等のニーズを踏まえた施設運営形態の多様化や「公共方式」とのバランスを考慮した支援方策のあり方の検討を行っていく必要がある。

 

 

 

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