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その際、これらの低・未利用地の活用にあたっては、まず、物流の効率化や親水機能の確保など、港湾の特性を活かした臨海部再編を基本とし、港湾管理者において、臨港地区における分区制度等の土地利用規制について弾力的な運用を図りつつ検討するとともに、それに限らず、都市行政を始めとする他の行政との連携を図り、地域全体としての対応を検討していくべきである。

 

6. 港湾間の相互の連携と調整

国や地方の財政制約がある中で、港湾施設の効果的・効率的な整備が求められている。このため、特に複数の港湾が近接して存在する地域において、各港の施設や機能を相互に補完しあうことは、地域全体の利便性の向上に結びつく施設の早期供用や、施設整備の重複投資の防止の意味でも重要である。また、単一の港湾管理者のみの対応でなく、複数の港湾管理者の連携による対応も重要であり、地域の連携した取り組みによって、水質等の環境改善の効果を高めるといった取り組みへの認識も高まってきているところである。

このため、集中投資による施設の早期供用、共同した定期航路の誘致活動、閉鎖性海域での環境の保全・創造等、複数の港湾が連携して対応することが有効な事項については、港湾の開発、利用、保全に関わる関係機関が一体となって連絡調整を行うことが重要である。

特に、国際的な視点での取り組みが求められる国際港湾の競争力の維持向上等の観点から、港湾管理者相互の連携・調整の実効性がある仕組みを検討すべきである。さらに、地方の自主性を活かしつつ、地方公共団体の枠を越えた広域港湾についても検討することが重要である。

 

第3節 環境の保全・創造のための取り組みの強化

 

1. 良好な自然環境の保全・創造への積極的な取り組み

港湾行政は、これまでも、その時々に生じた環境問題に対しては適切な対応を講じてきた。しかし、近年、生物・生態系に対する視点も考慮した「良好な環境の提供」が、港湾の役割として強く認識されるようになっている中で、環境の創造に対しては、十分かつ積極的な対応を講じ得ていないのが現状である。

このため、今後は、輸送拠点としての港湾の整備や運営と同様に、良好な港湾環境の形成についても、その重要性を明確に認識し、積極的に対応していくべきである。

港湾整備の実施にあたっては、干潟や海浜をはじめとした貴重な自然環境への影響を最小限に抑制するに止まらず、自然の能力を活用した新たな干潟や浅場の造成、護岸の緩傾斜化や海水浄化機能を有する構造の採用等をはじめとした生物生息環境を創造する構造形式の採用等の取り組みを進めていくべきである。なお、その際、これまでの港湾の開発・管理を通じて蓄積してきた潮流や漂砂等の知見、水質浄化機能や生物生息状況等に関する調査研究等の成果の活用を図りつつ進めていくことが重要である。

また、計画段階において、貴重な自然を保全すべきエリアや、良好な環境の形成等について明らかにするなど、計画的、総合的な取り組みが重要である。

 

2. 循環型経済・社会の構築への寄与

背後圏の都市圏から発生する廃棄物等については、減量・減容化、リサイクルの努力がなされているところであるが、なお必要となる最終処分場の確保は、内陸処分場の逼迫とその確保の困難性等から、相当程度海面に依存せざるを得ない状況にある。特に港湾と都市とが一体となって発展してきた我が国にあっては、港湾区域内での確保の要請が高い。

一方、人口が集中する三大都市圏域等の前面の港湾区域では、閉鎖性湾域であることによる地形上の海域の有限さ等から、廃棄物の受入も無制限に可能ではない。また、臨海部の土地需要が旺盛であった時代にあっては、廃棄物処分終了後の用地の利用も順調であったが、昨今の経済・社会の情勢の中で、その需要は低下してきている。

このため、海面処分場における廃棄物のより長期的かつ安定的な受入を担っていくためには、廃棄物の発生抑制も期待できる排出者負担原則に基づいて、廃棄物埋立護岸の整備財源の確保と廃棄物の処理料金の設定が可能となるよう、制度の見直しも含め検討を行うべきである。また、港湾工事の実施に伴い発生する浚渫土砂や各種建設副産物についても積極的に資材として再活用する等、港湾整備において資源循環型の取り組みを強化していくことが必要である。

 

 

 

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