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第2節 地域の主体的な取り組みの支援と強化

 

1. 港湾計画に係る港湾管理者の裁量の拡大

各港湾の「港湾計画」は、運輸大臣が定める「基本方針」との適合等の条件の下で、港湾の一元的管理者である港湾管理者が定めることとなっており、策定にあたっては港湾管理者が地方港湾審議会の意見を聴くこととなっている。また、重要港湾の場合には、運輸大臣は中央の港湾審議会の意見を聴いた上で必要があれば港湾管理者に変更を求めることができることとなっている。

今後の地域づくりは、地域の自立の促進と誇りの持てる地域の創造を目指して、地域を形成する様々な主体の参加と連携によって進められる必要があると言われている。こうした中にあって、港と地域が一体となって発展してきた歴史を有している我が国では、地域づくりと一体となった港湾計画の策定について、地域の実情に応じて機動的な対応を講ずることができるよう、これまで以上に港湾管理者の裁量の範囲を拡大することが必要である。

このため港湾計画の策定にあたっては、全国的・広域的な視点からの計画への取り組みの強化にあわせ、国においては全国的あるいは広域的な視点に立った効率的な物流体系の構築等の観点を中心に基本方針との整合を図るための審議を行うこととし、港湾管理者が地方港湾審議会限りで港湾計画の変更ができる範囲を拡大する必要がある。また、地方港湾審議会と国の港湾審議会の役割分担を明らかにし、各々の審議会の審議事項の整理を行い、各々が連携して効率的・効果的な審議を行うことが出来るように検討すべきである。

 

2. 補助事業に係る港湾管理者の裁量の拡大

地方の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を進めていくためには、港湾の整備において、事業の実施に際しての港湾管理者の裁量範囲の拡大も必要である。

このため、既存施設の有効活用を図っていく事業等について、地方分権推進計画に基づき統合補助金を創設することが必要である。

 

3. より利用しやすい港湾への取り組み

港湾は、地域において果たす役割の多様さから、船会社、荷主、旅客、港湾運送事業者、陸上輸送事業者等、関係する主体が多岐に亘る。このため最も地域の事情に通じた港湾管理者が中心となって、サービスの利用者の意向と提供者の意向の円滑な調整や、種々の関係主体間の利害調整や迅速な合意形成を図りつつ、各港の事情に応じた利用しやすい港湾づくりのための施策を講じていくことが必要である。この場合、国においても、港湾管理者への支援の観点から、港湾の利便性の向上を図るための支援を行うことを検討すべきである。

例えば、港湾運送事業の改革と連携した港湾の利用形態の効率化、高度化のための環境整備を始め関係省庁、官民等の連携や協力による施策や事業の展開を推進することや、多数の関係者によるITS(高度道路交通システム)等を利用した物流の効率化の推進、防災施設の配置、バリアフリー化の推進等の新たな課題への対応が重要となってきており、国においては、ノウハウの提供や国の機関と連携した支援策の確立等での積極的な対応が望まれる。

また、道路や鉄道等の他の輸送モードとの結節機能を強化し、港湾の物流機能のより高度化を図ることも必要である。

 

4. 市民が参加意識を持てる港湾行政の推進

港湾及び沿岸域が貴重な公共の資産であるとの理解と認識を、市民により深めてもらうための取り組みが先ず必要である。港湾管理者が中心になって、地域住民のニーズにかなったアメニティ空間の整備を引き続き進めていくとともに、港湾における諸活動や歴史的、文化的側面、沿岸域に関する情報の蓄積及び積極的な情報提供や、緑地・海浜・歴史的施設の維持・管理に地域住民やNPO等の人々が主体的に参加できるような環境づくりに努めていくことが重要である。また、港湾計画の策定や事業の実施等を円滑に進める中で地域の人々の意見を広く聴取する手法を検討すべきである。

 

5. 臨海部空間の再編促進

臨海部の低・未利用地については、i)海陸の交通アクセスの確保が比較的容易であること、ii)一団のまとまった用地であること、iii)周辺地域に比べ地価が廉価であること、iv)港湾の管理運営上必要な土地利用の制約はあるものの企業所有地が多く地権者が複雑化しておらず周辺との調整が比較的容易であること、v)比較的背後都市の中心市街地に近いこと等の特性を有しており、こうした特性の活用が有効である。

検討にあたっては、地域経営者の一人として港湾管理者の主体的な取り組みが望まれ、事業者や地権者等とともに官民一体となった活用協議会を設立し「臨海部再編プラン」を策定し、必要な支援措置と官民の適切な連携による臨海部活性化施策を進めていくことが必要である。

 

 

 

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