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4. 重要な港湾施設の整備と国の財政負担率の関係の見直し

社会資本の整備における国と地方の財政負担の割合は、一般的に国にとっての重要度や効用の及ぶ範囲、地方の受益の程度等の観点から定められている。

港湾整備においては、例えば、重要港湾の施設であれば、大型外貿バースであっても小型船だまりであっても、国の負担率が十分の五と一律に定められている等、必ずしも上記の観点に応じたものとなっていない点がある。

特に、全国的な見地から必要となる国際・国内の海上輸送網の拠点として、重要港湾において直轄工事によって整備される施設は、その効用が一つの地方公共団体の行政区域を越えて広域的な範囲に及ぶものであり、国際的な海運ネットワークのなかで、国内外の船会社が相互に利用する国際社会資本として整備が求められる施設でもあることから、国が相当の財政負担を行う必要がある。また、他の公共事業と比較して、港湾管理者の負担が過大であるとの声もあがっている。他方、重要港湾においても、その効用が広域に及ばない施設については、地方の受益に見合った負担率としていくことについて検討が必要である。

したがって、重要度の高い施設に重点的な投資を行い、効率的な物流体系を構築するため、国にとっての重要度や効用の及ぶ範囲、地方における受益の程度に応じて、整備する施設の国の財政負担率を見直すべきである。

 

5. 複数の港湾で利用される施設の運営のための取り組み

全国的な見地から必要となる海上輸送網の拠点として、直轄工事によって整備された施設も、港湾の一体的管理の観点から当該港湾の港湾管理者に管理委託され、利用に供してきたところである。

近年、港湾施設の効率的・効果的な利用に資するため、多数の港湾管理者が共同利用できる施設の整備が開始されている。

その一つとして、港湾の効率的な運営を左右する諸情報の的確かつ迅速な処理のための情報処理システムがあり、港湾の利用に際しては、関係省庁等への諸手続が多岐に亘ることから、省庁間、港湾間、国際間で整合性の図られた情報処理システムの構築が求められている。現在、第一歩として、入出港手続きの統一的処理を目指した港湾EDIシステムが構築され運用が開始されたところである。更なる利便性向上のため、大蔵省の海上通関情報処理システム(Sea-NACCS)と連携したワンストップサービスの実現を早期に目指すことが必要である。

また、大規模震災時の海路による緊急物資や被災者等の輸送路確保のため、全国的な整備目標の下に耐震強化岸壁の整備等を進めてきているが、これを補完する施設として、通常時に管理している港湾管理者の管理範囲を越えて被災地へ曳航して利用することを前提とした、浮体式防災基地の整備が三大湾で進められている。

このように、その利用港湾あるいは港湾管理者が一に限定されない港湾施設については、その管理の仕方が明確になっていない。特定の港湾管理者に負担がかからないような、適切な管理・運営体制とするとともに、特に浮体式防災基地については、移動の要否の判断や利用箇所の選定が適切に行われることが担保されるようにすべきである。

 

6. 沿岸域環境等の保全・創造のための広域的な取り組み

自然環境に対する国民の多様な要請に対し、十分な対応をして行くためには、潮流等に伴う海水の挙動等の広域性も考慮した取り組みが必要である。このため、港湾区域内での環境の整備・保全を進めるだけではなく、港湾を超えた沿岸域の環境保全についても検討を進めていくべきである。

特に、我が国の経済・社会活動が集中する市街地前面の閉鎖性海域は、港湾を中心として沿岸域の稠密な利用がなされてきた。このため、環境負荷物質が蓄積されやすく、臨海部からの影響を大きく受けてきた。閉鎖性海域を、持続的発展が可能なエリアとして将来世代に継承していくためには、港湾区域外で実施している堆積汚泥への覆砂や海面に浮遊するごみ・油の回収等の事業を継続し、これらの事業から得た技術の蓄積をも活かしつつ、沿岸域での環境の保全・創造についても、広域的な視点からの取り組みを強化すべきである。また、その実現に向けては関係機関と一体となった取り組みが重要である。

さらに、沿岸域の総合的な管理について、関係機関と連携しつつ検討を進めることも重要になっている。

 

 

 

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