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海陸を結ぶ輸送拠点としての港湾の物流機能の高度化にも十分配慮しつつ、これら、生活環境の改善のための対応について、引き続き進めていくことが求められている。

 

(環境の創造等への技術的対応)

「環境と開発に関するリオ宣言」やこの行動計画「アジェンダ21」、「生物の多様性に関する条約」等が採択された地球サミット(1992年)等地球環境問題の議論に多くの人々の注目が集まるようになり、環境基本法の制定(1993年)、気候変動枠組条約第3回締約国会議の開催(1997年)等により、地球規模の環境問題への認識は定着してきた。

こうした中で、運輸省港湾局は、1994年に新たな港湾環境政策「環境と共生する港湾<エコポート>」を発表し、環境と共生した港湾整備を進めることを提唱した。しかし、政策実行手段の拡充が不十分であったため、有害堆積汚泥の除去や海水交換施設あるいは緑地・海浜の整備等の従来からの人間の利用に重点をおいた施策以外は、港湾施設の建設等に付随した取り組みに留まっており、生物・生態系にも配慮した環境の積極的な創造を進めるには至っていない。

また、今後、港湾が持続的発展を可能とする沿岸域の環境改善に寄与していくためには、環境への負荷軽減を図る循環型経済・社会の構築にも貢献していく観点から廃棄物のリサイクルや最終処分への適切な対応、あるいは港湾整備における資材リサイクルの更なる推進への取り組みとそのための調査研究、技術開発が求められる。

 

(港湾を超えた広域的対応)

これまで、港湾における環境対策は、公害の防止、労働環境や生活環境の保全が中心となっていた。また、港湾の水域は、流入河川や海域とつながる大きな水の流動の中で捉えるべきであるが、港湾管理者による環境対策は、その管理する港湾区域に範囲が限定されるという限界を抱えてきた。

今後、高まる自然環境に対する国民の多様な要請に対し、十分な対応をしていくためには、潮流等に伴う海水の挙動等の広域性も考慮した取り組みが必要がある。このため、港湾区域内での環境の整備・保全を進めるだけではなく、港湾を超えた沿岸域の環境保全についても検討を進めていくことが必要になっている。

 

第3章 港湾行政の進むべき方向

 

21世紀において、港湾が第2章で示した役割を果たしていくためには、それぞれの課題を果敢に克服しつつ港湾行政を進めて行くことが求められている。

港湾が、海陸を結ぶ輸送拠点として、より効率的・効果的に機能していくためには、個々の港湾管理者の努力だけでは対応できず、全国的・広域的な視点に立った取り組みの必要性が生じてきている。また、個々の港湾が輸送拠点として、利用者のニーズに合ったより使いやすいサービスを提供していくためには、それぞれの地域の特性に応じた主体的な取り組みを進めていくことが必要となっている。

 

港湾が、個性ある地域づくりに資する空間としての役割を果たしていくためには、それぞれの地域が、既存制度を最大限活用しつつ創意と工夫を図るとともに、より主体的な地域づくりが進められるよう、国の制度見直し等を進めていくことも必要となっている。

 

恵み豊かな環境を、世代及び国境を超えた資産と捉え、その恩恵を享受しつつ将来世代に引き継いでいくためには、港湾及び周辺の沿岸域において、より積極的に環境の保全と創造への取り組みを進めていくことが必要であり、その際には複数の地方公共団体にまたがる広域的な取り組みも必要になってくる。

 

このように、「21世紀の港湾のあり方」を実現していくためには、全国的・広域的な視点からの取り組み、地域の主体的な取り組み、環境の保全・創造のための取り組みが必要であるとともに、港湾行政を進める上で、透明性や効率性等をより向上させる取り組みも不可欠である。

 

第1節 全国的・広域的視点からの取り組みの強化

 

1. 全国的・広域的視点からの計画への取り組みの強化

今日では、港湾は世界的な海運ネットワークの拠点として機能しており、グローバルな視点に立って整備を行うことが求められるとともに、国内においては、各港湾の整備が全体として効率的・合理的なものとなることが求められており、計画段階から全国的・広域的な視点を持った取り組みが必要となっている。

 

 

 

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