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なおその際、以下の点を考慮するべきである。

港湾機能には水際線が不可欠であることから、臨海部の低・未利用地の活用にあっては周辺の港湾機能と調和のとれた有効活用が図られるよう配慮されるべきである。

特に、三大湾等閉鎖性海域においては、水域が限りある貴重な空間であることから、その開発計画を策定する際には、まず、既存ストックを最大限に有効活用していくことが検討されるべきである。

また、将来の利用のための留保空間として暫定的な利用により対処しておくことも必要であり、阪神・淡路大震災の教訓も踏まえ、環境保全や防災対策のためにも、大都市の臨海部に一定のオープンスペースを確保しておくことも考慮されるべきである。

加えて、水際線が国民にとって限りある資源であり、臨海部の民有地の多くが公有水面を埋め立てて造成されたことに鑑み、パブリックアクセスの確保等公共のための有効活用を促すことも考慮されるべきである。

 

(地域づくりに不可欠な空間)

離島の港湾など地域の生活に必要不可欠な基盤としての港湾、地域の自主的な取り組みによる産業振興など地域の発展基盤としての港湾は、創意と工夫による個性ある地域づくりの上で「地域づくりに不可欠な空間」としての役割を果たす。

この際、こうした港湾の施設整備にあたっては地域発展の機会の均等化が図られる観点からも、引き続き国としての必要に応じた支援が望まれる。

 

(2) 対応すべき課題

(地域の選択と責任の一層の重視)

港湾は、地域社会にとって、地域経済の発展基盤、海洋性レクリエーションの場、日常生活の交通手段等として日々の暮らしに密接な関係を有している。また、地域の街づくりや環境の保全に密接な関連を有する社会基盤としての重要な役割を果たしている。

現在、行政改革の一環として地方分権の推進が図られるとともに、新・全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」において、地域の選択と責任に基づく主体的な地域づくりを重視しつつ国土づくりを進める指針が示されている。

今後は、人々の価値観に応じた暮らしの選択性を高め、多様性に富んだ美しい国土づくりを実現していくために、各地域の選択と責任による主体的な取り組みを基本として地域づくりが進められることが、従来以上に求められている。

港湾法では制定当時より、港湾管理者の業務として「一般公衆の利用に供するけい留施設のうち一般公衆の利便を増進するために必要なものを自ら運営」することを定めているが、一部の意欲的な港湾管理者を除いては「運営」あるいは「経営」といった視点での対応が十分行われたとは言い難い。

港湾の整備・管理においては、地方の主体性を尊重する港湾管理者制度の下、地方が地域の事情に応じた特色ある港湾整備に努めてきているが、これまで以上に、自立した地域づくりに寄与していくような取り組みが求められている。

 

(臨海部の円滑な土地利用の転換への対応)

高度経済成長期以降、港湾では積極的な施設整備が進められてきたところである。しかし、インフラの構造に併せた車両開発が進められる道路や鉄道に対し、港湾では船舶の寄港を維持するために船型に併せたインフラ整備が求められる。例えば、コンテナ船の積載個数の最大値はこの10年間に倍増する等、急速に進む船舶の大型化や荷役形態の変化に伴い利用効率の低下や陳腐化する施設が生じている。また、バブル崩壊後の企業経営の悪化や産業構造の転換に伴う臨海部用地の遊休化が生じてきている。この一方で、内航船からは休憩あるいは待機用の係留施設の不足、市民からは親水性施設の不足の解消が求められ、港湾の特性を活かした物流産業、リサイクル産業の立地等の新たな社会的要請の高まりも見られる。

こうした臨海部への多様な要請を的確かつ詳細に把握し、将来の土地利用動向に照らして、我が国の経済活力の維持と豊かな生活環境の安定的確保ができることを基本に、臨海部の円滑な土地利用転換を促進することが求められている。

 

(港湾整備事業の透明性・効率性等の向上への対応)

港湾の整備においても、国及び地方公共団体の逼迫する財政の中で、必要な施設の早期整備を進めるため、整備対象港の重点化や絞り込み等により、集中投資に取り組まれてきた。また、他の公共事業との連携の向上、費用対効果分析の活用、建設コストの縮減など効果的・効率的な港湾整備の推進が努められている。

 

 

 

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