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物流コスト削減を図ろうとする各企業は、より経済合理性に富む輸送ルートを選択することとなり、当該ルート上の港湾の利用が促進されることになる等、結果として輸送網が再編されることとなる。そのため、より経済合理性が発揮される輸送網が構築できるよう、全国規模で港湾施設の適正な配置が求められている。

 

(海運の構造変化に対応した港湾利用条件の整備)

アジアと北米間を始めとするコンテナ輸送の基幹的な国際定期航路においては、大型船を効率的に運航するため、船会社相互が船内スペースを融通するなど協調して運航するコンソーシアム(企業連合)が定着してきている。

また、内航においても、フェリー航路の免許制度の許可制度への変更(2000年10月)、RORO船等貨物船の船腹調整制度の廃止により、より一層の輸送効率の向上を念頭に置いた船舶の大型化や航路再編の動きが見られている。

こうした経済合理性を追求する海運市場の変化に対し、公共埠頭を利用しようとする場合には、施設使用の公平性の原則により船会社は自社の配船計画に沿った効率的な施設利用が必ずしも担保されない不安定さを抱えている。また、優先利用を前提として整備された公社埠頭を利用する場合には、施設整備に際しての公共埠頭との公的支援の差異による料金格差を被ることとなる。しかしながら現状では公共埠頭と公社埠頭での利用条件に大きな差がなくなっている場合が多いため、フェリーを中心に施設整備時の要件に左右されない現状での利用施設の使用料金と使用条件との公平性を確保することが求められている。

 

(港湾運送事業の効率化要請への対応)

港湾における荷役作業を担う港湾運送事業は、その健全で安定的な運営を図るために、事業免許制、料金認可制が取られ、港湾における円滑な荷役に寄与してきたところである。この結果、事業者間の競争が生まれにくい面や、船会社や荷主の二一ズにあったサービスが提供されにくい面が、課題として指摘され始め、集約・協業化等による事業規模拡大や企業体力の強化も図りながら、競争原理を導入する改革が進められようとしている。

こうした港湾運送事業の改革を促進し、より使いやすい港湾づくりを進めるための具体的な取り組みが求められている。

 

第3節 個性ある地域づくりに資する空間としての役割と課題

 

(1) 果たすべき役割

(人と自然に優しい臨海部空間)

港湾は、物流や生産活動を中心に発展を遂げてきたため、人々の生活から隔離されたものとなりがちであった。親水緑地の整備や民有地の水際線開放、あるいは歴史的遺産の活用等によるパブリックアクセスの向上が図られてきたが、引き続き、美しさが感じられ、市民に開かれ親しまれる港づくりを進め「人と自然に優しい臨海部空間」としての役割を果たす。

この際、自然環境に対する意識の高まりを考慮し、都市空間と港湾空間の調和を図りつつ、ゆとりある生活空間を創出し、高齢者や障害者等の利用に十分配慮したバリアフリー化の推進、市民が触れあうことのできる自然環境の保全・回復・創造にも積極的に取り組むべきである。

 

(地域活力の向上につながる多様な産業導入の空間)

臨海部における既存産業の再生・活性化、臨海部の特性を活用する新規産業の積極的な展開を図り、活力ある地域の形成に寄与する「地域活力の向上につながる多様な産業導入の空間」としての役割を果たす。なおその際、以下の点を考慮するべきである。

FAZ等の地域における外内貿の物流拠点としてのポテンシャルを活かした流通加工産業の展開、ゼロエミッション構想に基づき関係省庁と連携した循環型経済・社会の形成のためのリサイクル関連産業の誘致、風エネルギー等の自然エネルギーを積極的に活用する施設の整備への支援等を通じ、臨海部への立地が産業の活性化につながるように図るべきである。

併せて、利便施設、交流施設等の立地を誘導し、港湾を働く場とする人々にとっても働きやすい職場環境とするような取り組みも考慮されるべきである。

 

(臨海部ストックを活用した地域づくりの拠点空間)

臨海部の低・未利用地は、海上交通の活用等に不可欠な水際線を有するとともに、大規模で市街地に近接していることによる高い利用ポテンシャルを活かすことが可能であるところから「地域づくりの拠点空間」としての役割を果たす。

 

 

 

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