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特に、フェリーやRORO船を用いた複合一貫輸送は、港湾における荷役の容易さ、ドアツードア輸送の容易さから、航路設定次第でその利用の拡大の可能性を有している。このため、経済合理性を備えた輸送ルートを構成する港湾において、円滑な荷役を可能とする施設や十分な駐車スペースを備えたターミナルの整備、背後の道路網との円滑なアクセス確保・必要な静穏水域の確保等を進めるとともに、船会社や荷主等の利用者ニーズに対応したサービスの提供がなされるよう配慮されるべきである。

 

(2) 対応すべき課題

(グローバルな視点での対応)

国際海運市場における船会社の競争も厳しくなっており、外航海運において我が国港湾を利用する国内船会社の割合が著しく低下してきている。加えて、我が国の主要物資の海外依存度は増大の傾向にあり、国民の暮らしの安心や安定の確保のためには、いかなる事態においても内外の船会社が利用しやすいハード・ソフト両面からの港湾の条件の整備が必要となってくる。

また、かつて対欧米コンテナ輸送のアジアの拠点を担っていた我が国港湾は、経済の急速な躍進に伴うアジアの域内貨物量の増大、周辺諸国の港湾整備の進展等に伴い、コンテナ貨物取扱量でみた地位は相対的に低下してきており、国際港湾の競争力低下が問題となってきている。

この要因の一つとして、我が国では港湾を核とした臨海工業地帯の造成やアジア諸国の中ではいち早く国際海上コンテナ輸送に対応するなど、先駆的な取り組みを行ってきたが、港湾そのものを産業として捉えるよりは、海運産業を始め国内産業の育成や貿易振興等、国民経済的視点に立って港湾の整備を進めてきたことが考えられる。これに対し、アジア諸国は、国内産業の育成に加え港湾そのものを産業活動として捉え、国際海運市場の動向を勘案しつつ、他国港湾との競争の視点から設備投資や利用しやすい港湾サービスの提供に努めてきたことが挙げられる。アジア諸港が成長を遂げてきた背景を理解し、我が国においては、国民経済的視点に加え、国際海運市場にも影響を与える世界経済の動向を考慮するグローバルな視点からの迅速な対応も求められている。

 

(港湾間競争激化の下での重点投資)

重厚長大型産業の原材料や製品を輸送する不定期船の場合は、その取扱貨物の国内での陸上輸送が短距離にとどまるため、その荷主が立地場所を選択した段階で利用される港湾が限定される場合がほとんどであった。しかし、組立型産業や日用品等の製品を輸送するコンテナやフェリーに代表される定期船の場合は、船会社は安定的に一定量以上の貨物が積み取れる港湾に寄港しようとし、荷主はドアツードアで要する費用や時間の効率性から利用する航路・港湾を選択することとなる。このため、港湾は、荷主と船会社の取引市場の中で選択される対象に立場が変わることとなり、それぞれの港湾管理者は荷主と船会社に対して、できるだけ有利なサービスを提供しようとする競争関係に置かれる状態になっている。

港湾間競争の激化は、各港が競い合って高規格の施設整備を急ぐ誘因ともなり、限られた財源が各港湾に対し分散してしまう懸念を抱えており、全国的・広域的な視点に立った整備計画の下で重点的な投資を行うことが求められている。

 

(広域的な背後圏を有する輸送形態の進展に伴う広域的な調整)

道路網の充実に伴う自動車輸送の進展、国際水平分業の進展を背景とした日用品等の製品輸入の増大等は、港湾を利用する企業の範囲の広域化をもたらすとともに、荷役の迅速化や小口多頻度輸送等に対応できる複合一貫輸送を進展させることとなった。例えば、外国貿易量が3割程度の増加を見たこの10年間に、外貿コンテナ貨物量はほぼ倍増している。

この結果、当該港湾管理者の構成する地方公共団体の行政範囲を越える、広域的な港湾利用が拡大し、港湾相互の背後圏の重複の可能性が大きくなってきている。

このため、各港湾の整備は、船会社や荷主の港湾選択の自由度を高めるものの、背後圏の輸送需要が複数の港湾に重複して計上されることによる施設の重複投資が危惧され、計画の広域的な調整が求められている。

 

(物流コスト削減要請への対応)

貿易の自由化や、国際水平分業の益々の進展が想定される中で、国内産業においても、コスト削減等により、国際競争力を確保し、高い生産性や安定した雇用を保持・創出することが求められている。

 

 

 

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