日本財団 図書館


ア グローバル化に対応した国土構造の形成や、国際競争力を備えた活力ある経済・社会の構築とともに、暮らしの安心を支えるための「海陸を結ぶ輸送拠点としての役割」

イ 暮らしの安心や国土の安全を支え、創意と工夫による地域づくりを進めていくための空間を形成する「個性ある地域づくりに資する空間としての役割」

ウ ゆとりや潤いのある地域づくりを育み、恵み豊かな環境を享受・継承していくための「沿岸域の環境保全・創造への貢献」

 

第2節 海陸を結ぶ輸送拠点としての役割と課題

 

(1) 果たすべき役割

(国際競争力を備えた国際海上コンテナ輸送の拠点)

国際海上コンテナ輸送に対して、集中と分散のバランスの取れた航路や港湾の配置と、利用しやすい港湾サービスの提供により、「国際競争力を備えた国際海上コンテナ輸送の拠点」としての役割を果たす。なおその際、以下の点を考慮するべきである。

航路網の集積による港湾の国際競争力向上、船会社や埠頭の経営の投資効率の向上等の観点からは、少数の港湾に貨物が集中することが望ましい。しかし、過度の集中は、我が国の国土構造から、国内二次輸送の増加に伴うコスト上昇、環境負荷増大、大都市への交通集中等の課題を抱えることとなる。

一方、荷主の利便性の観点からは、就航港数の増加に見られるようにアジア諸国の近距離航路を中心に、近傍の港湾を利用することが望まれており、地方圏の国際化の進展を促すこととなっている。しかし、過度の分散は、投資効率の低下、低い寄港頻度による利便性の低下等により、必ずしも利便性を高めることとはならない。

こうした荷主と船会社の選択構造のバランスも勘案し、国全体としての輸送がより経済的に営まれるようにという国民経済的観点から、国際競争力を備えた国際海上コンテナ輸送の拠点が配置されるべきである。

また、これらの港湾においては、広いヤードや背後の道路網等との円滑なアクセスの確保、作業効率の高い荷役機械の導入等施設整備を図るとともに、通信・情報技術を活かした諸手続きの簡素化、荷役作業の省力化・自動化や全日通年化等、利用者ニーズに対応して異なる輸送モード間での連携が途切れず無駄なくなされるシームレスな一貫した輸送サービスが提供され、より低いコストで、高いレベルのサービスが提供されるよう、公平かつ自由な市場競争条件が整えられるべきである。

 

(産業競争力等を支える国際物流の拠点)

外貿貨物の85%は、工業原材料や飼肥料、エネルギー資源等のバラ貨物を中心としたコンテナ以外の一般貨物が占めている。これら貨物の陸上輸送距離が短距離にとどまるといった特性を考慮し、地域の輸送需要や隣接港湾間の距離等を勘案した多目的国際ターミナルの配置がなされることにより「産業競争力等を支える国際物流の拠点」としての役割を果たす。これにより、輸送船舶の大型化にも対応しつつ陸上輸送距離の短縮も可能となる等、最終消費地や既存の生産・加工工場等との輸送コストの削減を図るとともに、地域の潜在的発展能力を伸ばすことで、我が国の産業競争力の向上、地域の安定した雇用の確保等を支えていく役割を担うことができる。

なお、コンテナ貨物以外のこうした貨物を中心に扱う多目的国際ターミナルにおいても、コンテナターミナル同様、利用者ニーズに対応したサービスが提供されるよう配慮されるべきである。

 

(国土の骨格を形成する国内輸送網の拠点)

地球規模の環境問題への認識の定着の中で、人口減少・高齢化社会を間近に迎える我が国にあって、自然環境への負荷の低さ、エネルギー消費効率の高さ、少人数で大量輸送できる労働効率の高さ等海運の優位性を十分活かし、複数の輸送機関との連携が図られた国内のマルチモーダルシステム構築において「国土の骨格を形成する国内輸送網の拠点」としての役割を果たす。なおその際、以下の点を考慮するべきである。

国内輸送の輸送モード別割合で、海運は1980年には約5割(トンキロベース)を占めていた。当時に比べ、港湾取扱量は、フェリーでは3割増、内貿合計でも1割以上の増加を見ているにもかかわらず、モード別割合は約4割にとどまっている。この要因として、道路網の充実による自動車輸送の利便性の向上に比べ、海上輸送が、迅速性の追求や多様化が進む荷主ニーズに対応できなかったことも挙げられる。

今後、技術進展に伴う船舶の高速化、諸規制等の緩和・撤廃等による輸送サービス供給側への競争原理の導入等により、輸送時間の短縮、航路網の充実、輸送頻度の向上等、輸送需要側の期待する条件に適う輸送サービスの選択肢の充実が見込まれる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION