これらから、現在の運営上、岸壁本体についてはそれが可能かどうかは明らかではないが、港湾法の文言上は、運輸大臣の認可を受ければ、一般公衆の利用に供することを目的とした施設を貸し付けることが可能である。また、国が負担し、若しくは補助した金額に相当する金額を港湾管理者が国に返還した場合や、一般公衆の利用に供し、且つ、その貸付が三年の期間内である場合は可能である。
現状では国の資金で整備した岸壁を、民間に貸付ている例はまれであると考えられる。
・地方自治法
地方自治法第二百三十八条の四により、行政財産を民間企業に貸し付けることはできないが、二百四十四条の公の施設にあたり、同条第2項四の4で、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」とされており、地方自治体では、短期的(通常3年以内)に使用許可が行われている。
普通財産については、地方自治法第二百三八条の五により、これを貸し付けることができる。この際の貸付料については、地方自治法第二百三十七条において「適正な対価」とされており、一般に「時価」と解釈されている。
以上より、港湾管理者である地方自治体は、行政財産(港湾施設)を民間企業へ貸し出すことはできず、使用許可による運用をせざるを得ない。
また、公共埠頭のヤードにおいては、昭和34年9月8日港管第2288号の港湾局長から各港湾管理者あての通達が、埠頭使用者による施設整備に関して、公共利用の運用の徹底を示しており、それでもなお特定使用者の一部占用が生じる場合は、運用方法を提示して、港湾局長と協議することとされている。(ただし移動可能な施設(クレーン、アンローダーなど)や公共上屋の2階以上の専用利用等については協議を要しない。)
現在では、一部港湾の公共埠頭の使用許可で、実質、複数の港運業者によるヤード内への上屋整備を行う事例も見られる。
また、東京都においては、水産埠頭、木材埠頭において民間会社に対して冷凍上屋や木材用野積み場の専用使用許可(3年間)が行われている(岸壁は受益者負担の特別整備事業で整備されている)。
なお一部の港湾では、議会の承認があれば港湾施設の長期使用許可ができる規定もある。
ウ)他事業における行政財産の使用
まず、公共財産の民間使用の例をコンテナ埠頭以外で、その関連法案とともにみてみると以下のとおりであり、使用許可または普通財産の貸付であり、行政財産の貸付例はない。