日本財団 図書館


さらに今回実施した「方式別のターミナル費用と公共負担削減のシミュレーション」によると、民間事業者による人件費削減効果があれば、今回の提案方式が他の方式と比較して、公共負担(国と自治体の合計)を下げることができ、公共の利益につながるという試算結果になっている。

 

2]公共埠頭(岸壁、ターミナル用地)の専用貸付の可能性

専用貸付がボリュームインセンティブを働かせるため最も望ましい方法であるが、現行の法制度上は、港湾施設を特定の船社や港運業者に貸し付けることはできないため、岸壁、用地とも使用許可を継続していくしかない。

その際、岸壁については、一般公衆の利用が前提のため、一時的な使用許可しか認められておらず、係船回数の増加につれて料金が高くなる逆インセンティブの問題は解決されない。そのため利用者にボリュームインセンティブが働くよう、係船回数の増加に応じて単価を割り引くなど柔軟に対応していく必要がある。

また行政財産を普通財産に切り替えて貸し付ける方法もあるが、行政財産の使用料と普通財産に切り替えた際の貸付料には差異が生じることにも留意する必要がある。普通財産は周辺地価を参考にした時価が原則となるので、そのままではターミナル料金そのものの減額につながらない可能性がある。

以下に法制度上の整理を行った。

 

ア)港湾施設の位置づけ

・港湾法

現行の港湾法では、その利用実態はともあれ、国の負担や国からの補助を受けて整備した港湾施設は、すべて一般公衆の利用に供することを目的とした施設(港湾法第四十条、四十三条)である。

コンテナ取扱施設としては、国の負担や補助を受ける施設は、係留施設、水域施設(泊地)である。

荷さばき地、上屋、荷役機械は、港湾管理者が起債により整備する。

 

・地方自治法

地方自治法によれば、港湾施設は公有財産(第二百三十八条)であり、その中の行政財産(公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産)である。

さらに第二百四十四条の「公の施設」(住民の福祉を増進する目的を持ってその利用に供するための施設)になる。

 

イ)コンテナ取扱施設の貸付・使用許可について

・港湾法

公共の港湾施設は、すべて一般公衆の利用に供することを目的とした施設(港湾法第四十二条、四十三条)である。そのため、特定事業者への貸付の概念はない。

港湾法第四十六条は、

「港湾管理者は、その工事の費用を国が負担し又は補助した港湾施設を譲渡し、担保に供し、又は貸し付けようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。但し、国が負担し、若しくは補助した金額に相当する金額を国に返還した場合、又は貸付けを受けた者が、そのものを一般公衆の利用に供し、且つ、その貸付が三年の期間内である場合はこの限りでない」

とされている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION