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公共バースと公社バースの実績で明らかなように、専用的利用を図ることにより取扱量は増加する。取扱量が増えればコンテナ1個当たりの荷役料は下がり、最終的には商品の価格が下がると見れば消費者の利益につながる。

さらに今回実施した「方式別のターミナル費用と公共負担削減のシミュレーション」によると、民間事業者による人件費削減効果があれば、今回の提案方式が他の方式と比較して、公共負担(国と自治体の合計)を下げることができ、公共の利益につながるという試算結果になっている。

 

1]外国の事例

シアトル港

シアトル港の役割は経済活動を後押しすることである。港湾の活動は地域経済の成長の原動力であり、港湾の施設やサービスを利用して利益を上げる民間企業は、地域に経済的な恩恵をもたらす。

従って、シアトル港の場合、ある特定の民間企業によるバースの独占使用は、法律等では禁止されていない。

さらに今回調査したロッテルダム、ハンブルグをはじめとした欧州の主要港湾やシンガポールにおいても港湾は地域経済振興の原動力と認識されており、その施設を効率的に活用するために特定のターミナルオペレーターの長期の独占利用が社会的に認知されている。

 

2]鉄道の事例

鉄道の整備においては、港湾に比べて、企業の地域独占性が高いにもかかわらず、以下のような公的支援が行われている。

幹線鉄道(整備新幹線など)、都市鉄道(地下鉄、ニュータウン鉄道)に対して、それらが公益性を有する事業である一方で、膨大な資金と長期の懐妊期間を有することや民間企業ベースではリスクが大きいため、鉄道事業者に対する公的支援として鉄道建設に対する補助、交付金および無利子貸付が行われている。

なお運輸政策審議会答申(平成4年6月)では次のように謳われている。

 

運輸政策審議会答申「21世紀に向けての中長期の鉄道整備に関する基本的考え方について」

(平成4年6月19日)

「(幹線鉄道)…鉄道は地域独占性をもった公益事業であるため、企業性のみならず、利用者利便の向上の観点から、鉄道事業者には必要な投資を計画的に進めることが期待されている。その際、膨大な資金と長期の懐妊期間を要することや資金回収が困難であることから民間企業ベースではリスクが大きいため、必要に応じ、鉄道事業者に対する公的支援を行い、資本費の負担軽減を図る必要がある。」

「(都市鉄道)…鉄道整備が地域の活性化に重要な役割を果たすことにかんがみ、公的支援を受けつつ、第3セクター等が中心となって投資を行うことが望ましい。」

 

 

 

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