日本財団 図書館


(6) 従来の概念を超えた新しい「公共性」の理念

 

国が負担または補助した港湾施設の専用的利用を特定の民間企業に認める場合、港湾法でいう「一般公衆の利用に供する」こと(いわゆる「公共性」)に反しないかが問題となると考えられる。

この問題について、本調査委員会の委員長でもある横浜国立大学経済学部の来生教授が別添(40ページ)のとおり見解がまとめられている。

本検討では、それを参考に、以下に示す 1)公共の利益の増進を図ることを最優先として、併せて2)利用の公平性 3)参入手続の透明性や 4)排他的な取扱いの禁止、緊急時への配慮等の条件を同時に満足することを、新しい「公共性」と考える。

かつて、我が国においては港湾施設の量的、質的な貧弱さから、外国貿易路の確保という「公共の利益」のために、これらの条件の中で、数少ない施設に対する利用の公平性を第一としてきたと考えられる。

しかしながら、港湾施設の整備が進み、外国との貿易形態も急激な変化を成し遂げた現在においては、外国貿易路の確保のためには海外港湾との競争に打ち勝っていかなければならず、新たに効率的な港湾施設の利用という観点から、以下のように、港湾に対する「公共の利益」をとらえていく必要があるのではないか。

 

港湾の役割は経済活動を後押しすることである。港湾の活動は地域経済の成長の原動力であり、港湾の施設やサービスを利用して利益を上げる民間企業は、地域経済に恩恵をもたらす。シンガポール、北米、ヨーロッパのような世界の主要港においても、地主型港湾の運営方式において、公共性が問題になっていることは無く、社会的に認知されている。

港湾におけるある特定の民間企業によるバースの独占使用は、公共性の名のもとに禁止されるべきではない。「欧米の港湾の理念の導入」

 

ただし、日本においてこのような対応を開始するにあたっては社会的な認知を受けることが重要であり、港湾計画に規定するか議会の承認を得るなど、制度的な対応を含めて実施していくことが必要になるかもしれない。

なお、先の港湾審議会管理部会答申「経済・社会の変化に対応した港湾の整備・管理のあり方について」(平成11年12月)では「…『公共方式』については、公共性を阻害しない一定の条件下で定期航路等の効率的運用を図ることが可能となるような各港湾の実状に応じた使用ルールの確立…の検討を行っていくことが必要」と謳っている。

以下に公共性を確保するために満足すべき条件を示す。

 

1) 公共の利益の増進=効率性の追求

港湾の運営に際しては、機能の増進につながらないことはあってはならないことで、税金を投入した施設の「効率性」を高め、その施設のポテンシャルを最大限発揮させることで公共の利益の増進につなげる必要がある。

日本の港湾の国際競争力の低下が指摘されているが、コンテナターミナルの効率性を高め、国際競争力を維持・発展させていくには、高能率なターミナルオペレーターによるバースの専用的な利用が不可欠であり、このことが最終的な国民の利益につながるといえる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION