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しかしながら、「公共方式」と異なり、国と地方の無利子貸付金や財投資金等の借入金による施設整備のため、原価回収を基本とする固定的な貸付料金となっている。このため、公社バースの取扱貨物量が当初借り主の想定した量と異なってくる場合には、借主である船会社にとっての当該貸付料の負担感も大きく違うものとなってくる。

さらに、就航船舶の大型化に伴う施設の高規格化・大規模化等から施設整備費が高額となっていることや「公共方式」によるコンテナ船やフェリー航路用の同等機能の施設整備が進んできていることもあいまって、「公社方式」のメリットが相対的に低下してきている。

他方、「公共方式」についても、現行では、原則として船会社はその都度利用するごとに、施設の使用許可の申請を行い港湾管理者が係留場所を指定することとなっており、施設利用における不安定要因となっている。

港湾における輸送コストが最も低減される使用形態は、その貨物取扱量によって異なり、船会社等のニーズに適宜対応していくための使用形態の多様化や効果的な財政支援等を講じていくことが必要となる。

このため、各港において各港湾管理者が港湾を一元的に管理運営していく観点から、港湾の実状に応じて「公共方式」と「公社方式」の適正な役割分担について見直すとともに、「公共方式」については、公共性を阻害しない一定の条件下で定期航路等の効率的運用を図ることが可能となるよう各港湾の実情に応じた使用ルールの確立、「公社方式」については、船会社等のニーズを踏まえた施設運営形態の多様化や「公共方式」とのバランスを考慮した支援方策のあり方の検討を行っていく必要がある。

また、施設の使用料金についても、施設使用ルールの多様化に対応して、利用頻度に応じた弾力的な料金設定等を行うことが必要である。

なお、いわゆる「新方式」により整備・運営されるコンテナターミナルについても、港湾管理者は、上記の考え方を踏まえ、長期的な事前包括承認等の予約制度の導入等を図ることが必要である。

 

2) 港湾運送事業に係る規制緩和

港湾運送事業の需給調整規制の廃止を含む見直しについては、行政改革委員会においては、平成9年12月には、現行の事業免許制(需給調整規制)を廃止し許可制に、料金認可制を廃止し届出制にすべきである、同時に港湾運送の安定化等を図るための各施策の実施及び検討が必要である旨の最終意見が内閣総理大臣に提出された。更に、平成lO年3月には、行政改革委員会最終意見の内容にしたがって、必要な措置を講ずる旨の閣議決定が行われた(規制緩和推進3カ年計画)。

これを受け、平成10年5月より、運輸政策審議会海上交通部会及び同港湾運送小委員会において、港湾運送事業の規制緩和の具体的進め方や規制緩和に伴う港湾運送の安定化策等についての審議が行われて、平成11年6月10日、運輸政策審議会海上交通部会答申「港湾運送事業の規制緩和について」が発表された。

 

 

 

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