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7. おわりに

 

はじめに、ミノルスキー法に準拠している照射済核燃料等運搬船の「耐衝突構造」を評価している現行基準について検討課題の洗い出しを行った。この結果、「衝突代表船としてT-2タンカーを採用していること」、「被衝突船船側外板の抵抗力および破壊吸収エネルギーが明示されていないこと」、「40〜50年前の事故事例をデータベースとしており、最近の材料や溶接法の開発進展が反映されないおそれがあること」などの問題点が抽出された。そこで、現行基準に則り設計された照射済核燃料等運搬船の「耐衝突構造」が実際にどの程度有効であるのかを確かめてみることをWG活動の大きな柱とした。

代表的な照射済核燃料等運搬船を被衝突船とし、T-2タンカー、最大級VLCC、Suezmax級大型タンカー及び超大型コンテナ船を衝突船と仮定した想定衝突シナリオについて、詳細シミュレーション解析及び簡易解析の2方法を用いて損傷解析を実施した。この結果以下の成果が得られた。

(1) 現行基準の衝突シナリオ通りにT-2タンカーが15ノットで真横から衝突する場合について解析した結果によれば、T-2タンカー船首の方が一方的に崩壊して、被衝突船の船側部の損傷は極めて小さいことが判明した。

(2) 現行基準に従い、T-2タンカーを想定して「耐衝突構造」に設計されたこの使用済核燃料等運搬船は、Suezmax級の大型船さらには最大級VLCCが衝突した場合でも致命的な損傷には至らないことが判明した。すなわち、現行基準に則って設計された「耐衝突構造」は、ミノルスキー法準拠という旧い評価法に基づいているにも関わらず、安全性の面から見れば十分信頼できるものであったと言えよう。大型船の衝突に対してそれほど危険にならない原因は、まず第1に、衝突船が大型であっても船体破壊で吸収されるべきエネルギーはT-2タンカーの場合と比べてそれほど大きくならないこと、さらに、現行基準では被衝突船と衝突船の衝突貫入関係が両者同様の深さと仮定しているのに対して、実際はT-2タンカーはもちろん大型船の場合でも、衝突船の破壊がより大きいこと、および両船体間の摩擦によるエネルギー散逸が大きいこと等に由来することが判明した。

(3) 超大型コンテナ船が衝突した場合には、船速12ノットでは上述の最大級VLCCの場合と同様に船倉の破断には至らないと推定された。全速力(23ノット)で真横から船体中央部に衝突するという特殊なシナリオを想定した場合にのみ、縦通隔壁を突き破り船倉内に貫入する恐れがある。ただし、「衝突角度が斜めである場合には全速力で衝突しても、コンテナ船船首が折れ曲がるので、船首が船倉内まで貫入する事態には至らないと推定された」ことを付記する。また、衝突船船首が船倉内に貫入しても、直ちに運搬容器の健全性が損なわれるということにはならないと判断される。

(4) 詳細シミュレーション解析と簡易解析との比較検討から、簡易解析法の解析精度向上及び適用範囲の拡大を図ることができ、本簡易解析法をミノルスキー法に代わって基準に適用する見通しを得ることができた。

照射済核燃料等運搬船が重大衝突事故に遭遇する可能性を確率的に検討した。上述の(2)、(3)によれば、衝突船がタンカーのような肥大船に衝突されても船倉の「耐衝突構造」は十分成立するものの、特定の超大型コンテナ船がある限られた条件で衝突してきた場合のみ、船首部が船倉内に貫入する恐れがある。

 

 

 

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