6. 簡易解析法を適用した照射済核燃料等運搬船の耐衝突構造評価法
ミノルスキー法に準拠した現行基準には、前述の通りいくつかの問題点があった。これらの課題を克服して、本WG活動成果を基に、より合理的に安全性を担保する新たな耐衝突強度評価法を提起する。この新評価法においては、最近の船舶運行状況を反映して仮想衝突船としてT-2タンカーに代わって大型タンカーを採り上げ、より現実に近い想定衝突シナリオを設定した。また、衝突船及び被衝突船の破壊進展及び抵抗力を推定する手法として第5章に示した簡易解析法を用いることにした。この簡易解析法によれば、船側外板の抵抗力が合理的に評価され、船体材料の実際の材料特性を考慮する事が可能である。また、衝突船及び被衝突船の接触面におけるそれぞれの抵抗力が評価され、抵抗力の弱い方の破壊が先に進展するという実際の破壊のメカニズムを追究できることも大きな利点である。以下に、本評価法の詳細について記す。
6.1 想定衝突事故シナリオ
以下の衝突条件を想定する。
被衝突船:
評価対象船
載貨状態
速度ゼロ(停止中)
衝突船:
大型タンカー(290,000DWT)
バラスト状態(排水量 124,000 トン)
喫水 8.5m (イーブンキール)
速度 15ノット
船首バルバスバウ形状:(A)扁平型、(B)尖鋭型
衝突条件:衝突船船首が被衝突船中央部船倉の中央に真横(衝突角度90°)から衝突
仮想衝突船として、最大級のVLCCを採り上げる。船首バルバスバウ形状は扁平型および尖鋭型の2種類の場合を想定する。扁平型は標準的な形状であるので、扁平型のみ採り上げれば十分と考えられるが、より安全を期して、被衝突船にとりより厳しい(被衝突船の損傷が大きくなると予想される)尖鋭型の場合も採り上げることにする。この衝突船モデルの運動エネルギーの大きさ(1.4×107Ton・Knot2)を、衝突事故事例の統計と比べると、超過確率0.074%であり、T-2タンカーの運動エネルギーレベル(超過確率2.3%)に比べかなり大きい。尖鋭型船首の形状は、バルバスバウ部分で扁平型船首場合の0.5倍であると仮定した。その他の形状・寸法は扁平型と同様であると仮定した。扁平型(図4-3参照)及び尖鋭型の船首形状を模式的に図23に示す。