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5. 簡易解析法を用いた損傷解析

 

5.1 簡易解析法による衝突解析

船舶の衝突における吸収エネルギーを推定する方法として、実験による方法、簡易式による方法、有限要素法等を用いた詳細シミュレーション解析による方法などがある。実験は莫大なコスト、時間がかかるため、あくまで他の手法を実証するための補助的な方法として留めておくことが望ましい。近年の陽的有限要素法による解析ソフトウェアとコンピュータハードウェアの進歩により、詳細シミュレーション解析も十分可能になってきているが、依然としてモデル作成、計算ともに非常に時間がかかり、また現状では計算にあたり多くのノウハウを必要とするため、設計の現場において使うことは困難である。そのため、耐衝突構造の設計にあたっては簡易式の適用が不可欠である。

衝突に対する吸収エネルギーを推定する方法としては、ミノルスキーによる先駆的な研究1)があり、現在でもこの式が耐衝突構造要件などに用いられている。しかしこの式は、崩壊した鋼材の体積から衝突時の吸収エネルギーを求めるという非常に簡易な式であり、船首形状や船側の構造を考慮していない。パラメータは実験的に決められており、想定していないような構造様式に対しては、精度に関しても疑問が残る。特に、ここで扱う照射済核燃料等運搬船のように非常に特殊な耐衝突構造を持った船舶に対しては、衝突船の船首と被衝突船の船側の強度に大きな違いがあることがあり、ミノルスキーの式の有効性を再評価する必要がある。

船舶の衝突の際の崩壊挙動は、a) 衝突船の船首の圧壊挙動とb) 被衝突船の船側の崩壊挙動 の2つに分けて考えることができる。船舶のような薄板構造の圧壊挙動に関しては、板における塑性ヒンジの生成、そしてそれによる板の剛体運動として表現することができる。ここでは、文献2)、3)の方法に基づき船首が剛な船側に衝突した際の圧壊量と反力の関係式を導き、さらに文献4)の方法に基づいて剛な船首が船側に衝突した際の船側の貫入量と反力の関係を求める。そして、それぞれの反力の釣り合いを考え、双方が崩壊する場合の挙動を解析する。

 

5.2 解析手法

船首部圧壊挙動の解析手順を示す。

船首が剛な壁に衝突し圧壊する際の崩壊長さと反力の関係を求める。衝突船船首部を図8に示す要領でいくつかの断面に分割し、その断面の交差部をL型、T型、X型に分類し、それぞれに対して、以下の解析を行う。

各交差部に対して、平均的な板厚t及び細長比β=bm/tを以下の式から求める(図9参照)。

 

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