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(2) 衝突船が(海査第520号にて指定する)T-2タンカーである場合

T-2タンカーが、海査第520号の想定通りの条件で運搬船に衝突した場合には、図6に示す様に、T-2タンカーの船首構造が主体的に圧潰する一方で運搬船の船側構造は殆ど圧潰しない事が判った。海査第520号で規定されるエネルギー吸収量を確保する様に設計された運搬船の船側構造は結果的に高剛性になっている。従って、発生する接触力の最大値は約4000トンとなっているがこれは、ほぼT-2タンカーの船首部圧潰強度に対応している。海査第520号ではT-2タンカーの船首構造と運搬船の船側構造とで相対的強度差があっても双方が同レベルで圧潰すると仮定しているので、実質的には十分に安全側(船倉の耐衝突防護性能上の余裕度が高い)の設計となっている事が判る。

 

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図6 T-2タンカー(満載:15Kt)*運搬船(13Kt)衝突方向3時

 

(3) 衝突船が6200TEU級超大型高速コンテナー船である場合

図7-1に示す様に、超大型船コンテナー船が空荷状態で、輻輳海域(船舶の衝突事故発生は希であるが、相対的に発生の可能性が高くなるのは高速で航海する外洋ではない:3.2.2(2)-b参照)に於ける実用上限速度である12ノットで真横90度(3時方向)から運搬船に衝突すると、コンテナー船の船首バルバスバウ部分が大きく屈曲し、運搬船の内殻を破壊する可能性が低い事が判る。他の解析結果から類推すると、コンテナー船が満載状態にあって12ノットで衝突する場合にも、船倉の保護(浸水防止の相当)に問題は生じないものと推定される。

超大型船コンテナー船が最大速度であっても4時方向から追突状態で運搬船に衝突すると、図7-2及び7-3に示す様に積付け状態が空荷であっても満載であっても船首バルバスバウ部分が、運搬船の二重船側或いは二重底を貫通して船倉内に到達する可能性が少ない事が判る。従って外洋での希な衝突事故に遭遇しても、衝突角度が、真横ではない(回避操船の結果も含む)場合には、船倉の保護に問題は生じない。

一方、超大型コンテナー船が、最大速度で真横3時方向から運搬船に衝突すると、図7-4及び7-5に示す様にコンテナー船の積付け状態が空荷であっても満載であっても船首バルバスバウ部分が、運搬船の二重船側或いは二重底を貫通して船倉内に到達する可能性が有ることが判った。但し、もともと当該船との外洋での遭遇確率が十分に少なく且つ回避のための操船・減速も予想されるので、この様な衝突条件の発生は極めて希であると考えられる。

 

 

 

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