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3. 衝突事故事例調査による統計確率的検討

 

3.1 衝突事故事例調査

衝突事故の統計調査では、主としてLMIS(Lloyd’s Maritime Information Service)社の海難データベース1)を参照した。このデータベースからは、1978〜1996年間に100GT以上の船舶が遭遇した海難事故23,506件についての検索が可能である。データベースには、事故種別、船舶(損傷した船舶のみ)の仕様、事故発生場所、発生日時、乗員および積み荷の損害等について詳細な情報が含まれている。しかし衝突事故に関しては、衝突の状況(衝突速度、衝突角度、衝突・損傷位置、損傷規模)などについての詳細情報は無い。なおここで言う「衝突事故」とは、公的に報告され記録される程度、従って少なくとも「実害の無い程度の軽微な接触事故」を除いた事故である。但し、小型船との衝突或いは大型船であっても軽微な衝突レベルであれば、海査第520号による耐衝突構造要件を満たす照射済み核燃料等運搬船にとって有意な事故とは見なせない。従って、3.2「重大(被)衝突事故発生確率の予測検討」に於いて基礎とする統計データとしては、無視されていても問題は無い。

1978〜1996年の稼働総船舶数は登録船舶数から、1,207,202隻・年であった。一方統計検索の結果、この期間に於いて「衝突」が引き金となった海難事故数は、計3,082件であった。従って、平均した衝突事故発生確率は2.55×10-3(回/隻・年)であり、全事故数との比は0.131に相当する。衝突事故を発生水域別に整理した結果を、表1に示す。通常の海上・海峡などで発生した「有意義」な衝突事故件数は1693件であり、約54.9%に相当する。

また、全世界を551の格子状区画に分割した場合に於ける各区画別衝突事故発生件数を、調査してみた。図1は、衝突事故発生件数の多寡を円の半径で示したものである。圧倒的に衝突事故件数が多いのは日本中央部近海(461件)及び英国海峡近辺(411件)の欧州海域である。

一方、年度別衝突事故発生件数と登録船舶総数の推移を調べた結果、登録船舶数が漸増の傾向にあるのに対して衝突事故発生件数はほぼ単調減少の傾向を示している事が判った1)2)。例えば、18年間に於ける平均衝突事故件数は171件/年であるが、1993年から1995年までの3年間平均では68件/年に低下している。航法規制と航海機器の発達などによる効果と考えられる。将来的にはISM Code(国際安全管理コード)の導入或いは衝突予防装置の発達などにより一層重大衝突事故の発生確率の低下が進むものと考えられる。

衝突角度及び衝突位置の統計調査は、1985〜1997年間に100GT以上の船舶が遭遇した衝突事故(1061件)に関する海難審判庁採決録を参照して実施した。調査の結果、衝突角度は180度(左右対称)の範囲でほぼ均一に分布している事が、また衝突位置も被衝突船の船首から船尾までの範囲でほぼ均一に分布している事が判った。

 

 

 

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