日本財団 図書館


ここ数年の間に、実船の衝突破壊実験が実施され、破壊の詳細FEMシミュレーション解析法および破壊の簡易解析法の開発が進展してきており、上述の課題を再検討するためのデータおよびツールが揃ってきたので見直し作業の環境が整ったといえよう。

以上の課題について、より問題点を明らかにするために、想定事故例についてミノルスキー法に準拠した現行基準を適用した場合と、第4、5章に述べる解析法を用いた場合について、それぞれから得られた算定結果を比較すると以下の通りであった。

(1) 破壊吸収エネルギーの分担

被衝突船として、前述の試解析対象船(排水量 約7,000トン)を採り上げて、衝突時における破壊吸収エネルギーの大きさについて、現行基準に依った場合と次章以下に示す解析法を用いた場合とを比較すると大きな違いが見られた。解析結果によれば、破壊吸収エネルギーの90%以上をT-2タンカーの船首が受け持つのに比べて、現行基準によれば破壊吸収エネルギーの3/4を被衝突船が分担すると評価していることになる。この結果、現行基準により設計された「耐衝突構造」は、実際にT-2タンカーが衝突した場合には、T-2タンカー船首の方が一方的に崩壊して、被衝突船の船側部の損傷は極めて小さいことが判明した。

(2) 破壊吸収エネルギーの大きさ

衝突船としてT-2タンカーのみならず、Suezmax級大型タンカーおよび最大級VLCCを採り上げて衝突破壊の解析を実施した。この結果、衝突船が大型船の場合でも船体の破壊により吸収されるエネルギーの大きさはそれほど大きくならず、T-2タンカーに比べてせいぜい20%程度増大するだけであることが分かった。満載の最大級VLCCの場合では、初期運動エネルギーの2.3%が破壊吸収エネルギーにより費やされるだけであり、初期運動エネルギーの大部分は運動エネルギーとして保存される。

また、詳細シミュレーション解析によれば、両船体間の摩擦により吸収されるエネルギーの大きさが無視できない大きさであることが判明した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION