(4) Double hullの中・小型船と衝突し油タンク2槽が破損し、流出油に着火して、海面火災が発生して、INF3船が事故現場から脱出できず、漲水装置、船倉冷却装置とも作動しない発生頻度は4.24x10-11/隻・航海である。
以上の結果から、衝突後の海面火災時において輸送容器の密封性能の健全性が保持できない頻度は、これら4つのシーケンスの発生頻度の和をとり一航海あたり、2.94x10-8/隻・航海と評価された。
INF3船の照射済燃料等輸送物の輸送回数は、日本とヨーロッパ間では最大3回、国内輸送では最大12回と想定した場合、INF3船の年間の最多航海数を12回とすると、輸送物の健全性が損なわれる確率、即ち、密封性能が損傷する確率は
2.94x10-8/隻・航海x12航海/年 = 3.53x10-7/隻・年
となる。この値は種々の人間活動にともなう事故発生頻度は言うまでもなく、原子力発電所等の設備に想定されている事故発生頻度(例えば米国NRCの規制指針)や国際原子力機関の格納容器が損傷して大量の放射能が環境に放出される発生頻度10-6[24]に比較しても十分小さい値になっている。
以上の結果は、一般船の海難統計データに基づき評価しており、INF3船は、訓練された乗組員が従事していること、自動衝突予防援助装置が設置されていること、実際の航路選定上事故多発区域を回避していること等を勘案すると、油タンカーとの衝突事故発生確率はより低くなることが想定される。更に、一般船に比べて安全設備が厳しく保守管理されていることを考慮すると、船倉冷却装置、船倉漲水装置の不作動確率は更に低くなることが想定されるので、輸送物の健全性の損傷発生確率は更に低くなり、照射済核燃料等輸送物の海上輸送時の火災事故に対する安全性は非常に高いことが明らかになった。