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5.1.9 火災事故現場からの脱出成功確率

万一タンカーと衝突し、流出油に着火して火災が発生した場合でも、速やかに事故現場から脱出できれば輸送容器に重大な影響を及ぼさないですむ。ここでは、INF3船がタンカーに衝突して海上火災事故を引き起こし、自らが火災に巻き込まれるというシナリオに沿って解析を行い、INF3船が事故海域から脱出する確率を求めた。5.1.8で述べた海難統計に基づき解析した結果、運搬船が事故現場から脱出に成功する確率は0.3と評価された。

 

5.1.10 漲水装置の作動成功確率

4.3で行った輸送物の熱影響解析から、漲水装置が作動すればキャスクの健全性は保たれることが判明した。そこで、火災が発生した際の各機器の機能喪失確率を求めた。即ち、各種報告書[20]、[21]や船社からの聞き取り調査結果等を基に、アラーム、射水消火装置、固定式炭酸ガス消火装置、船倉冷却装置、船倉漲水装置について、火災発生時の作業手順の設定と作業フロー分岐確率を検討することにより、最終的に各単位ユニット毎の作動確率を求めた[22]。このうち船倉漲水装置については、満水にするため31時間持続して運転する場合の作動成功確率は0.917と評価された。

 

5.1.11 船倉冷却装置の作動成功確率

万一、漲水装置の作動が失敗しても船倉冷却装置が作動していれば船倉内の温度上昇が抑えられキャスクの健全性は保たれると考える。5.1.10と同様の手法によって、火災発生時の船倉冷却装置の作動成功確率を求めた。海面火災時における、連続30時間の船倉冷却装置の作動成功確率は0.914と評価された。

 

5.2 イベント・ツリー解析結果

前節の検討結果をもとに、イベント・ツリーの定量解析を実施した。イベント・ツリー解析ツールとしては運輸省の船舶技術研究所で実施している「GO-FLOW手法の応用研究」において開発したGFES(GO-FLOWイベント・シーケンス解析システム)[23]を使用した。解析結果のイベント・ツリーを前述の図13に付記する。右端には各シーケンスの発生頻度が記載されており、さらに放射性物質輸送容器の健全性が保たれないシーケンスについては×印が付けられている。

イベント・ツリー解析の結果、INF3船が油タンカーに衝突して発生する海面火災において、輸送容器の健全性を保持できないシーケンスとして以下の4ケースが同定された。

(1) Single hullの大型船と衝突し、外側油タンクが破損して流出油に着火して海面火災が発生し、INF3船は事故現場から脱出できず、漲水装置、船倉冷却装置とも作動しない発生頻度は2.83x10-8/隻・航海である。

(2) Single hullの中・小型船と減速せずに衝突し、外側及び内側油タンクが破損し、流出油に着火して海面火災が発生してINF3船は事故現場から脱出できず、漲水装置、船倉冷却装置とも作動しない発生頻度は9.01x10-11/隻・航海である。

(3) Double hullの大型船と衝突し油タンク2槽が破損し、流出油に着火して、海面火災が発生し、INF3船が事故現場から脱出できず、漲水装置、船倉冷却装置とも作動しない発生頻度は1.00x10-9/隻・航海である。

 

 

 

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