日本財団 図書館


4.3.2 漲水装置が作動しない場合

輸送物の健全性を評価するために過酷な条件として、第3世代の超大型タンカーの場合には、INF3船は800℃、1.8時間の火災環境に曝される場合と、海面に流出した油の燃焼が緩やかな場合には、400℃、5.4時間の火災環境に曝される場合について解析した。輸送物の周辺温度としては安全側に図9に示す「雰囲気」の温度を用い、壁からの輻射温度としてはハッチカバー下面位置の温度を用いた。機関室火災の場合と同様に胴部の輻射伝熱面積(形態係数)を1/2とした。蓋シール部の最高温度が最も高いのは400℃、5.4時間の場合で、その最高温度は135℃以下であり、Oリングの合成ゴムの短期(〜1週間)使用範囲178℃を下回っており、輸送物の健全性は損なわれることはないことが明らかになった。

次に、輸送物の安全裕度を評価することを目的とし、仮想的に海面火災の火炎温度が800℃で30時間に亘り火災が持続する条件で、漲水装置が作動しなかった場合について解析した。輸送物胴中央部、レジン及びガスケット部の温度履歴の解析結果を図12に示す。ガスケットは約15時間後に180℃になり、合成ゴムの短期使用範囲178℃を上回り、30時間後には228℃となる。しかし、最近短期間(2日間)の使用上限温度を調べる試験から、ガスケット(エラストマーOリング)は302℃まで密封性に重大な損傷を与えないことが判明している[19]。即ち、仮想的な海面火災条件を想定しても、中性子遮蔽材の劣化は考えられるが、輸送物から環境への放射性物質の漏洩は生じないと考える。尚、TN28VT型輸送物の安全解析では、火災時に中性子遮蔽材はすべて消失するとして評価し、所定の遮蔽機能を有することが確認されている。更に、本解析では輸送物周囲の温度としてハッチカバーに近い部分の雰囲気温度を用いる等、非常に安全側な仮定に基づいて行っていることを付記しておく。

 

027-1.gif

図12 海面火災時に漲水装置が作動しなかった場合の輸送物の胴中央部、レジン及びガスケット部の温度履歴

(火災温度800℃、火災持続時間30時間)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION