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5. 海上火災発生時の輸送物の確率論的安全性評価

 

最過酷事象として運搬船が油タンカーに衝突して海面火災が発生した状況を設定し、油タンカーとの衝突確率、油の流出確率、着火確率、火災現場からの脱出確率、漲水装置や船倉冷却装置の作動成功確率等を勘案したイベント・ツリーの定量的解析を実施する。

 

5.1 イベント・ツリー解析用データベース

INF3船がタンカーなどの他船との衝突時に発生する海面火災事象のイベント・ツリーを図13に示す。ここでは、このイベント・ツリーを定量的に評価し、海面火災発生時の照射済燃料等輸送物の安全性を評価するために必要な基礎データベースを構築する。

 

5.1.1 衝突事故発生頻度

起因事象となる衝突事故発生頻度は、日本海事協会(NK)船級登録船約6千隻の事故統計データ(1995〜1997年)を解析することにより、1.33x10-3/隻・航海とした。

 

5.1.2 被衝突船の船種

衝突相手の船種としては、油タンカー、液化ガス運搬船、その他の一般船に大別して考察する。現在NK登録船におけるこれら船舶の比率は、油タンカー1,131隻(17.3%)、液化ガス運搬船354隻(5.4%)、その他の一般船5062隻(77.3%)であるので、この比率を被衝突船の割合として用いた。尚、被衝突船が液化ガス運搬船である場合は、2.2で検討したように無視し得るほど少ないため、イベントツリー上ではその後の分岐は検討していない。

 

5.1.3 重大損傷発生確率

NK登録船の統計データによると、全衝突事故のうち、「全損+重大損傷」に分類される事故の割合は15%となっている。これに基づき、油タンカーに衝突した際に、油タンクが破損する恐れのある重大損傷発生確率を0.15と推定した。尚、被衝突船が一般船である場合にも燃料油が流出する確率もこの値を用い0.15と推定した。

 

5.1.4 油タンカーの構造による分類

2.2で論じたように、衝突時に発生する油タンクの破損状況解析において、被衝突船として4種類のタンカーを設定した。それぞれSingle hullかDouble hullかによる区分と、大型船か中・小型船舶(10万総トン(GT)以下)かの区分である。NK登録船のデータによると、Single hull、Double hullはそれぞれ85%、15%であり、それぞれにおける大型船、中・小型船の割合は、90%対10%及び98%対2%である。それ故、Single hull−Double hullの分岐割合を0.85:0.15と設定し、その次のヘディングである大型船と中・小型船の分岐割合を0.90:0.10及び0.98:0.02と設定した。

 

 

 

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