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4. 海面火災時の輸送物の健全性評価

 

4.1 海面火災時の船倉内の熱影響評価のモデル化

本研究では、高レベル放射性廃棄物を輸送するINF3船が、万一の海面火災に遭遇した場合に、運搬船が装備している漲水装置の有効性を検証するとともに、漲水装置が作動しない場合に輸送物の健全性に与える熱的影響を解明することを目的として、船倉内及び輸送物周りの雰囲気温度履歴を明らかにすることを目的として実施した。

INF3船は耐衝突構造を有するため、海面火災に遭遇した場合の船倉への主要な入熱経路は、ハッチカバーを介したものである。即ち、ハッチカバーの上部鋼板の外表面が火災雰囲気に曝されることにより、上部鋼板の温度が上昇するとともに、断熱材に熱が伝えられ、最終的にアルミニウム板が温度上昇する。この結果、船倉内の雰囲気温度が上昇して空気の対流と輻射により輸送物へ熱が伝えられる。本研究では断熱材としてフェノリックレジンを想定した。フェノリックレジンの熱拡散率の温度依存性とペイント塗装鋼板のふく射率は別途の試験から得られた成果を用いた[18]。

船倉内の温度分布は、輸送物への主要なふく射伝熱面に相当するハッチカバー、内床板及び船側縦通隔壁、空気、輸送物をモデル化して、ABAQUSコードとふく射計算のための形態係数算出コードを使用した。本コードは、熱伝導、熱伝達及び輻射を解析する機能を有するが、熱流動解析の機能を有しない。そのため、船倉内の空気の熱流動に伴う伝熱効果は、空気の熱伝導率にヌッセルト数を乗じることにより、等価熱伝導率として取り扱っている。

雰囲気温度が38℃の船倉内に設置された輸送物(TN28VT: 42kW)が800℃及び400℃の海面火災に遭遇することを想定している。火炎温度の800℃及び400℃は海面に漏洩した油の燃焼速度に基づき設定している。

解析モデルは、船体の横断面を解析対象とし、左右の対称性を考慮した二次元モデルとする。対象とする船倉は、保守側の評価結果を得るため輸送物を最大6基収容できる第2船倉とする。評価対象となる船体横断面のモデルを図8に示す。

 

 

 

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