また、液化ガス運搬船は一般に厳しい安全運行指導下にあることより10-2を乗じ[8]、INF3船の排水量と船速が小さいことからタンク破壊確率に1/2を乗じると、一隻のINF3船が液化ガス運搬船に衝突し貨物の大量流出事故を生じる確率は8x10-9/隻・年となる。
同じ文献[6]によれば、厳しい安全運行指導下にある場合の貨物の大量流出を伴うタンク破壊確率は、0.75x10-5であることから、同様に一隻のINF船が液化ガス運搬船に衝突し貨物の大量流出事故を生じる確率として5x10-8/隻・年となる。また、文献[9]より、年間の衝突事故件数が概ね2x102/年であることからも同じオーダーの3.2x10-8という確率を得るので、INF船の隻数を101のオーダーとして、結局全世界で照射済核燃料等運搬船が液化ガス運搬船に衝突し貨物の大量流出事故を生じる確率は10-6から10-7/年程度と見ることができる。IAEAにおいては、安全目標として重大事故の発生確率10-6/年・隻以下を想定しており、上記の値は十分に小さい値であると考えられる。
以上の考察から本研究では、油タンカーが今日極めて多数就航していること、また上述の如く多量の油流出が考えられることから、今回被衝突船としては油タンカーを対象とする。
2.2.4 海面火災の規模および持続時間
次に、海面火災のシナリオを設定するために、火災持続時間および火災温度を評価する。
(1)火災規模と持続時間のモデル評価
海面火災をモデル化することにより、油漏洩時間、火災持続時間、火災温度を推定する。INF3船が海面火災に遭遇した場合に運搬する輸送物の健全性を評価するために、再着火現象がない場合について、現実的に起こり得る条件を安全側の仮定を導入して解析的に評価する。海査第520号で規定されている耐衝突構造の解析に用いられている修正ミノルスキー式に基づきINF3船が油タンカーに衝突した場合の荷油タンク破損状況を解析した。4種類の油タンカーを対象とした。型式としては、第2世代のSingle hull typeと第3世代船Double hull typeの2種類、サイズとしては大型船と中・小型船(10万総トン(GT)以下)の2種類の合計4種類である。衝突時の破口面積は、修正ミノルスキーの式[10]に従い、海査第520号に基づき衝突によって失われる運動エネルギーと衝突吸収エネルギーとの釣合い位置での衝突断面面積の33%増と、INF3船の衝突角度は、油タンカーの真横からと仮定した。その結果、破口面積は海面より上方で58.6m2、海面より下方で18.2m2となり、その合計は76.8m2となった。また、油の漏洩量は現在航行している代表的な油タンカー(排水量350,000t級)でタンクの容積から42,400m3と算出された。更に、将来航行の可能性のある超大型タンカーも想定すれば、油漏洩量は60,000m3、80,000m3及び100,000m3が想定される。
荷油漏洩率v(t)を水面上荷油漏洩率v1(t)と水面下荷油漏洩率v2(t)との和として表せる。