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2.2.3 衝突および座礁時による火災事故シナリオ

(1) 衝突および座礁の火災事故例

衝突および座礁時の火災シナリオ作成のための基礎データとして、主要な衝突火災事故および座礁火災事故事例を調査し、収集した。調査した事故事例は少なくとも一方が日本国籍船であるか、または日本国領海で発生したものである。これらの事例を、事故概要に関して、衝突船か被衝突船かの類別、火災発生原因、火災規模/自船状況、貨物倉への影響などを併せて調査した。輸送物が最も過酷な状態に遭遇するのは、自船(INF3船)が原油等危険物運搬船の船倉部に衝突、原油等の引火性危険物運搬船の破口から流出した可燃物により海面火災が発生し、その海面火災にまきこまれる場合である。

(2) 被衝突船の選定

引火性危険物運搬船中、今日最も一般的であり、また、危険物の積載量が大であるものは、油タンカーである。現存する油タンカーは、海洋汚染防止条約(MARPOL)により世代毎に3種類に分類することができる。

第1世代とは、原則的に1973年12月以前に建造契約のものであって、荷油タンクの容積及び配置に制限を設けていない。本世代船は1996年現在世界の大型油タンカーの約3割を占めているが、原則的に2001年末迄に使用を限定されおり、退場してゆく状況にある。

第2世代とは、1974年1月以降かつ1993年7月以前に製造契約のものであって、MARPOLにより最外側荷油タンクの容積約30,000m3以下、及び、配置(荷油タンクとバラスト水タンクを互いに隣接させ、二個の荷油タンクの同時損傷を回避する)に制約を設け、船側損傷時の油流出量を40,000m3以下とするものとされている。本世代船は現在世界の大型油タンカーの大半を占めている。

第3世代とは、1993年7月以降に製造契約のものであって、二重船殻構造とし、最外側荷油タンクと船側および船底外板間に空隙(船側部にて幅2m以上)を設けるものとされている。この世代船は最外側荷油タンクを二重船殻構造にて防御することにより、MARPOLにて定める計算法にて、船側損傷時の油流出量を40,000m3以下とするものとされている。但し、この世代船は最大50,000m3の最外側荷油タンクを隣接して設け得るものとされていることから、単純に和をとれば、最大油流出量は100,000m3となる。

液化ガス運搬船(LNG船(液化天然ガス運搬船)およびLPG船(液化石油ガス運搬船)の2種類がある)も、その火力、積載量ともに大であり、やはり危険度は大きい。文献[6]によれば、衝突によりLPG船が貨物の大量流出事故を生じる確率は、12.4x10-5/隻・年である。LNG船についても同様であると仮定(LNG船の構造を考えるとより安全側の仮定である)し、全世界の主要な(100GT以上)商船の隻数をLloyd's Register of Shippingにより8x104とし、主要な液化ガス運搬船(載貨重量100t以上)隻数を約103とする[7]。

 

 

 

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