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ここで、A1は水面上破口面積(m2)で、A2は水面下破口面積(m2)で、Dは摩擦損失係数(0.5と仮定)、h(t)はt秒後の水面上油面高さ(m)、h0は破口高さ(m)、ρwは海水密度(kg/m3)、ρ0は荷油密度(kg/m3)、kは有効面積係数、gは重力加速度(m/s2)である。油流出有効面積は、被衝突船の破口とそれに食い込む衝突船の船首部の位置関係と詳細構造から決まるが、解析的には評価できないので、破口面積に修正係数(有効面積係数)を乗じて求めた。本研究では有効面積係数を0.01〜1.0としてパラメータとして扱って解析した。また、海上の油面の拡散半径は次式より求める[11]。

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ここで、R0は初期液面半径(m)、v(t)はt秒迄の全流出量(m3)、tは液面半径がR(t)となる時間(s)である。燃焼に際し、漏洩率が燃焼率より大なる時は燃焼しつつ油面が拡大するとし、漏洩率が燃焼率より小なる時は油面の大きさ一定のまま燃焼、油面厚さが減少するとし、一旦油面厚さが零となる時点で燃焼が終了すると考える。

次に火災温度については、過去のプール火災実験では[5]によれば、600℃から1,000℃に亘る実験結果が報告されているが、火災範囲全体を平均して見た値としては800℃と考えられる。一方、八丈島近海洋上での流出原油火災実験結果[12]によれば、火災温度として400℃が報告されている。従って、火災の最高温度は800℃と設定してよいと考えられる。海面に流出した漏洩油の燃焼に伴う液面降下速度は、火災持続時間に大きく影響を与える。本研究においては、石油燃焼実験結果[5]に基づき、火災場を一様温度分布の円筒でモデル化して燃焼エネルギーの熱収支および燃料消費量(海面に流出した漏洩油の燃焼に伴う液面降下速度)を解析した。その結果、液面降下速度は、火災温度が1,000℃の場合は4mm/分、800℃の場合は2mm/分、及び400℃の場合は0.4mm/分を得た。

以上の結果から、INF船が海面火災に遭遇した場合の輸送物の健全性を評価するために、現行の代表的なタンカーに対する800℃、0.9時間と、緩やかな燃焼が持続する場合の400℃、3.8時間、並びに、超大型タンカーに対する800℃、1.8時間と、緩やかな燃焼が持続する場合の400℃、5.4時間の4ケースの火災条件をシナリオとして選定した。

(2)火災事故例の調査

現実の海面火災現象は非常に複雑であり、風波の影響や鎮火後の再着火現象などを上述のモデル化のみで評価することは困難である。更に、他船からの消火支援などを考慮するとその火災持続時間を純粋に理論的に評価することも困難である。危険物積載船の衝突による海上火災事故事例から海面火災の規模を考察してみる。表1に危険物積載船の衝突による海上火災事故事例をまとめるが、8例中6例は30時間内に鎮火していることが分かった。

まず、海上火災時間が30時間以上持続した事例を以下に考察する。所要鎮火時間が異常に長い第拾雄洋丸の場合は、海面火災は発生後約2時間で消防艇の消火活動により一旦抑圧されている。その後は主として本船の爆燃のみが続き、衝突後20日目に自衛隊の砲撃により沈没させている[13]。やはり所要鎮火時間が異常に長いヘイムバルト号は海面火災時間未詳であるが、これは岸壁との衝突による港内事故で、今回想定の衝突事故とは異なるものである[14]。大部分の事故例では他船から消火支援を受けている。

 

 

 

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