2. 海上火災時の苛酷事故のシナリオ
2.1 想定する船舶及び検討対象輸送物の設定
はじめに、海上火災時の輸送物の健全性と確率論的安全性を評価するために、解析対象とする専用運搬船と輸送物を設定した。
B型核分裂性輸送物を輸送できる専用運搬船は、日本国内で出入港するためには運輸省の海査第520号のB種船に定められた構造及び設備要件に適合する必要がある。そこで、本研究では、海査第520号B種船の要件を満足し、我が国で出入港しているINF3船を勘案して、電源装置、通信設備、輸送物冷却装置等の安全上重要な機器は二重化された構造を有する全長約100m、型幅約16.5m、型深約10m、最大喫水約5.6m、載貨重量約3,000tの専用運搬船を選定した。
輸送物は、IAEA輸送規則のB型核分裂性放射性輸送物の要件を満たすものとし、本研究では、特に国際間輸送を考慮して、海外から我が国へ返還される高レベル放射性廃棄物を収納する輸送物を選定した。輸送容器としては図1に示すTN28VT型輸送容器を想定する。本輸送物の主要寸法、重量、材質及び収納物の放射能強度、発熱量は100t級の使用済燃料の輸送容器とほぼ同様のものであり、全長は約6.6m、直径は約2.4m、輸送容器重量は約100tで輸送物の総重量は約112tである。輸送容器の主要材質は炭素鋼、ステンレス鋼、中性子遮蔽体(レジン)、銅プレートであり、収納物はガラス固化体28体又は20体で、総発熱量は約42kWである。