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そこで、限定近海船及び沿海船の船首高さについて長期予測計算の結果を用いて直線近似を行った結果を同じく図7.5及び図7.6にそれぞれ実線で示す。この結果、直線は-0.0022×Lpp+1.0となる。現行の内航船のほとんどが船長100m以下であること等を勘案し、船長100m以上の船舶については船長100mでの係数0.792で一定とし、それより短い船舶については-0.0022×Lpp+1.0により求めた係数を限定近海用の修正係数として満載喫水線規則第58条(別添3)で規定される最小船首高さの式に乗ずることで限定近海船の船首高さを決定することが一案として考えられる。さらにこのようにしてもとめた限定近海の船首高さに沿海用の修正係数として0.945を乗ずることで沿海船の最小船首高さとすることが一案として考えられる。この案にもとづき定められる限定近海船及び沿海船の最小船首高さの一例(Cb=0.68)を図7.10に示す。

 

7.7 限定近海船に対する乾舷指定条件

乾舷値を決める前提条件として、甲板出入り口等の水密性を設定することになるが、その基準として沿海基準とするか遠洋・近海基準とするか、あるいは新たに基準を設定するかを考える必要がある。現行の沿海及び近海の要件を比較すると、船長30m以上の船舶に関しては乾舷甲板等における昇降口室の出入り口の敷居高さを除いて沿海と近海の要件は同じである。そこで、沿海と近海で異なる要件を持つ部分について限定近海の要件を定める必要があると考えられる。

今回提案を行った限定近海船の乾舷に沿海における敷居高さ450mmを加えた場合の限定近海における船体中央部打ち込み確率と沿海船が450mmの敷居高さを航行した場合の船体中央部打ち込み確率との比較を行ったので表7.1に示す。両者の打ち込み確率にほとんど違いがないことがわかる。これは、すでに限定近海船の基本乾舷により、限定近海においても沿海船と等価の安全性を担保しているためと考えられる。これらの結果及び海象の類似性を勘案し、限定近海船の要件については現行の沿海の要件を適用することが一案として考えられる。

 

7.8 まとめ

現在運行されている沿海船を用いて、海水打ち込み関連の諸量(打ちこみ頻度並びに打ち込み水による甲板上水位及び荷重)について長期予測及び短期予測計算を行い、海域の違いがこれらに及ぼす影響について検討を行った。さらにその結果を用いて、限定近海船の乾舷規定及び沿海船の最小船首高さならびに乾舷の指定条件について検討を行ったところ以下のことが基準案として考えられる。

(1) 限定近海船の基本乾舷は、満載喫水線規則第70条(別添3)で規定される沿海の基本乾舷に修正係数として1.06を乗じた値とする。

 

 

 

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