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7.5 基準案作成にかかる海水打ち込みの観点からの検討

限定近海で必要となる乾舷及び船首高さを定量的に検討するために、現在運行されている沿海船が航行中に発生すると予測される海水打ち込み関連の諸量(打ちこみ頻度並びに打ち込み水による甲板上水位及び荷重)の長期予測計算を行い、現行の沿海規定で担保している安全性の評価を行った。その結果をもとに限定近海で必要と考えられる乾舷及び船首高さを推定し、検討を行なったので以下に示す。

 

7.5.1 計算条件

入力である応答関数については、Strip法(NSM)で行なった。内航船の船体運動等についてStrip法で十分推定可能であることは、本部会で行った実験により明らかにされている(第3章参照)。

船体応答関数を推定するための計算条件について、船速は海象及び波との出会い角によらず各船の公称の航海速力で航行するとした。縦慣動半径については、全ての船で0.25Lpp(Lpp:垂線間長)とした。横揺れ減衰係数は、前進速度のない状態の減衰係数を渡辺・井上の実験式から求め、これに高橋の前進速度の修正関数を乗ずる方法で求めた。なお、渡辺・井上の実験式の中で必要となるビルジキールの面積に関しては、運輸施設整備事業団の設計資料や中造工の技術指導書を参考に長さを垂線間長の40%、幅を全幅の2.8%と仮定した。横揺れ固有周期については、IMOの総会決議A.749に示されている推定式(船長、船幅、喫水及びGMの関数)を用いて推定した。

長期予測計算を行うために必要となる波のスペクトルは船体応答のエネルギースペクトルの計算に必要な波のスペクトルとしては、ISSCスペクトル(Modified Pierson-Moskowitz型)を用いた。また、方向分布は、cos2χ分布を仮定した。また、長期予測計算に必要となる波浪頻度表に関しては、沿海区域及び限定近海については、局所波浪データを整理したものを用いた(第2章参照)。近海区域に関しては、局所波浪データでは全ての海域を網羅していないので、船研で整備している波浪データベースに収録されている波浪追算データの内、近海区域に含まれる範囲のデータをまとめて頻度分布表を作成した(第2章参照)。

 

7.5.2 計算結果

(1) 限定近海で必要となる乾舷

沿海及び近海規定において基本的に担保されている安全性はそれぞれ基本乾舷及び基準乾舷であり、これらの上に各船の構造配置に応じて各船固有の修正が施されて各船毎の乾舷が定められている。そこで、沿海規定及び近海規定で規定されている基本乾舷及び基準乾舷が担保している安全性を海水打ち込みの観点から評価し、同じ安全性(長期発生確率)を担保するために限定近海で必要となる乾舷を推定する。

 

 

 

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